「未来の設計図」には8つの目標を書く
新規に迎える一年間の売上利益目標を経営計画に書くのは当然であるが、いったい「一倉式の経営計画書」の中味はどうなっているのか?
経営計画は社長が描く「わが社の未来の設計図」であり、トップダウンで激烈な企業競争を勝ち抜いていくため、また生き残りをかけた必達の目標を掲げている。
一倉先生の指導先の多くは中堅・中小企業であり、今日、東証一部上場になった企業も数多くあるが、当初は皆オーナー自らが筆を執り一言一句書き綴った計画からスタートしている。
なぜか? それは数字の表記、発表だけでは、社長の意思伝達を正しく行うことができず、社員が都合よく理解し、思い思いに行動してしまうからである。
目標設定と経営方針書として5~60ページ(A4版)で明文化させ、毎月の月次会議で、また朝礼で読み合わせを繰り返し徹底し、浸透を図るのである。なかには100ページを超える大作もある。
では社長として何を目標設定するのか? 大きくは8つ。
(1)市場の地位(シェア、業界内のランク)
(2)利益(代表的には社員一人当り経常利益額)
(3)革新(高収益を実現する事業構造への変革)
(4)生産性(量的な生産性と質的な生産性の両面から)
(5)人的資源(要員計画)
(6)物的資源(安定供給の体勢と固定資産、設備投資)
(7)資金(内部留保と短期、長期の資金調達)
(8)社員の処遇
すべてをここで解説する紙面はないが、普通であれば経営目標の一番初めに上がってくる利益目標より、(1)の市場の地位が先に出てくることについて少し述べておこう。
危険極まりない経営計画を立てる会社
ほとんどの方は「限界生産者」と聞いても何を意味するのかわからないと思う。
「わが社の主製品が業界の中で4番手か5番手ぐらいで関東周辺の主要店舗に陳列され、それなりの取引を継続できて、経常利益も2%くらい出ている」
例えば、上記の会社が昨対比、売上伸長5%の計画を立てていたら?
決して悪い会社ではないが、市場の地位から考えると危険極まりない経営計画となってしまう。
もし、同業製品のヨーロッパのブランド品が日本に上陸してきたらどうなるか? 店舗のバイヤーとしては品揃え的に絶対欲しいと思えば、棚割りは限られているので現扱い商品の一番低いシェアの商品をはずし、新ブランド品を置いてしまう。店頭は活性化しても、わが社の商品は陳列されなくなり、市場から消えてしまい一気にピンチを迎える。
「いや、わが社は消費財ではなく生産財だ。法人取引だから大丈夫だ」、では済まされない。