中級家具の強み

山田会長は「10%も増えれば」黒字だといいましたが、実際はもう少し積み増しが必要でしょう。それでもこれまで大塚久美子社長がどうしても達成できなかった売上増が、ヤマダ電機の販売力で100億円積み増しされれば大塚家具とヤマダ電機の戦略シナリオはいい方向に変わってきます。そしてヤマダ電機の住宅事業部が1860億円の事業規模、言い換えれば販売力をもっていることを考えると、このシナリオは戦略的に達成しうる範囲内の数字に見えます。

このシナリオにはもうひとつプラスの面があります。大塚家具の扱う“中級家具”という商品はヤマダ電機グループの中では明らかにアマゾンエフェクトの影響を受けにくいタイプの商品に分類されます。中級家具は婚礼の際や家の新築・増改築の際に求められるものなので、それなりの価格の商品が選ばれるうえに、ネットではなく実際に店舗で見て購入するタイプの商品になるからです。

この点ではホームセンターで販売される家具と比べて、売り上げをアマゾンに持っていかれるリスクは相対的に小さいのです。

このように戦略的な見通しとして考えれば、ヤマダ電機による大塚家具買収はプラスに働く可能性が見込めるシナリオとして検討されたものだと思われます。では2020年の展望は順風満帆かというとそうではありません。

子会社の大塚家具は洗礼を浴びる嵐の一年に

ヤマダ電機の社風は経営目標を絶対に達成しなければならない厳しい社風です。結果が出せなければ山田家出身の役員であれその地位にとどまることができません。ましてや雇われの役員の退出や降格は当然のように行われます。大塚家具はそのような社風の企業グループの一員に迎え入れられたわけです。

そう考えると、これまで黒字化する経営計画を出しながら赤字の結果を出してきたにもかかわらず銀行団がクレジットラインを設定して支援してくれていたような状況のほうがずっと生ぬるかった。そのように思えるほどの変化が、2020年の大塚家具を襲うことになるのです。

大塚久美子社長をはじめ、大塚家具の経営陣、管理職は、ヤマダ流の経営手法に大いに戸惑いながらヤマダ色に染められていくことになるはずです。そしてヤマダ電機が本当にほしいものは大塚家具というブランドだと仮定すれば、結果が出せない社員はその地位に残ることが難しい。大塚家具の幹部社員はそのような一年を過ごすことになるでしょう。

つまり大塚家具を買収したヤマダ電機にとって2020年はチャレンジの一年になる一方で、大塚家具にとってはヤマダ電機化の洗礼を受ける嵐の一年になるということだと私は思います。

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