必要時に必要な人数が必要な場所にいる
現状把握後に取り組むべきは繁忙時間への対処より、むしろ仕事の少ない手待ち時間をどうするかである。必要時に必要な人数が必要な場所にいるシフトを実現するためのリアルタイム・サービス法。そんなに簡単にいくか? とも思ったが、料理の作り置きをやめた旅館の実例に説得力があった。人は何ごともまとめてやることが効率的と考えがちだ。しかしそれは業務に大きな波をつくることにもなる。注文に合わせこまめに作る(仕事を小ロット化する)ほうがシフト上も有利であり、結果、顧客満足にも貢献する。
著者発案の「稼働対応労働時間制」も興味深かった。これは一日の労働時間を、変形させない固定労働時間と、稼働状況で変動する稼働対応労働時間に二分割するもの。詳しくは本書で読んでもらうとして、既存の変形労働時間制、裁量労働制、フレックスタイム制などの問題点をうまくフォローしていると感じた。
突っ込みどころがないわけではない。稼働対応制にしても(賃金への配慮はあるにせよ)個人の都合より会社の都合を優先してほしいという制度である。子どもが保育園にいる時間は無駄なく働きたいのに……といった声も聞こえてきそうだ。仕事量を平準化するためのマルチタスクの提案も、業務の単純化・マニュアル化が不可欠。一周回って、20世紀初頭の「テイラーの科学的管理法」の薫りが漂う。
とはいえ1000社を超える企業訪問を行い、その調査結果をモデル化した提言は貴重だ。本書を端緒として非製造業、とりわけサービス業の生産性向上へ向けて、方法論の議論が高まればと思う。