デイサービスで分かった職員さんの仕事ぶり

自分が認知症になってわかったこととして、デイサービスの体験についても触れておきたいと思います。認知症になってデイサービスを利用するようになり、そこでいろいろな人に会っておしゃべりしたり、お風呂に入れてもらったりしました。これは非常に勉強になりました。

いままでは、自分が医者の立場から患者さんに「デイケアやデイサービスに行ったらいいですよ」と勧めていました。自分が反対の立場になったら、いろいろ見えてくるものがあります。

とくにいいなと思ったのは、デイサービスに行ったときに受ける入浴サービスです。職員の方がお風呂で身体を洗ってくれて、さっぱりしてじつに気持ちがいい。王侯貴族のような気分です。

利用者の人たちとも仲良くなりました。あと何といっても感心したのは、職員の方たちの仕事ぶり。利用者のことを一人ひとり、よく知っていて、何かあるとすぐに声をかけてくれます。利用者が帰ったあと、ミーティングをして、綿密にケアのことを考えているのです。

利用者としっかりしたコミュニケーションをとっている姿を見て、これはたいした組織だなと思いました。日本のケアは、こういう方たちの努力の上に成り立ってきたのだなと実感し、こうしたサービスを上手に利用することの大切さを、当事者になって感じたのです。

生まれて初めてのショートステイ

2019年には、自宅近くの有料老人ホームで、生まれて初めてショートステイ(短期的に施設に入所して、支援が受けられるサービス)を利用しました。2泊3日です。ボクは家内と二人暮らし。子供たちは何かと気にかけてくれて、よく助けてくれるけれど、家内に万が一のことがあった場合のことを考えて、一度、ショートステイを利用しておこうという話になりました。

その有料老人ホームは、それまで2~3回、訪れたことがあります。ボクが認知症であると公表したこともあって、「入居者のみなさんに、一度、話をしに来てください」と頼まれたからです。そこでスタッフの人たちとも顔を合わせていたので、ショートステイを利用する際にも、不安はまったくありませんでした。

どうでしたかって? よかったですよ。やはりここでも、スタッフがよく教育されているのを感じました。職員の人たちが、こちらをうまくのせてくれるというか、その気にさせてくれるのです。「長谷川さん、お食事ですよ」とか「体操の時間ですよ」とか。明るく声をかけられると、こちらも「じゃあ参加しようか」という気持ちになります。サービスを利用してみることの大事さを、ここでも感じました。

ただ、一泊したところで「もう、家に戻りたい」と思ったことも事実です。家にいると電話が鳴ったり、届け物が来たり、近所の人が寄ったり、バタバタしているけれど、生活のにおいがありますから。デイサービスも正直、つまらないなとか、行きたくないなと思うときもあったりしますが、そんなときは、家内が少しでも楽になるならと思い直しています。