支給停止後、長女は通院もやめて症状は悪化の一途
また、長女は通院の際、服装にも気を遣うようになりました。きちんとした服装をして、問診は無理をして気丈にふるまっていたそうです。なぜそのようにしたのかはよく分かりませんが、おそらく新しい先生が若い男性だったことが理由のひとつかもしれない、と母親は考えているようです。
「なるほど。新しい先生に対して、ご長女が問診で本来の状態とは違うお話をされていたようなんですね。その結果、ご長女の本来の状態を反映していない診断書が作成されてしまった可能性があると。ちなみに、通院をやめてからどのくらいたっていますか?」
「大体1年くらいです」
「え? そんなにたつんですか。ご長女の体調は悪化していませんか?」
「そうなんです。通院をやめてから長女の様子がどんどん悪くなっているように感じています。『頭や体がすごく重い。何もする気がおきない』と言い、食事や入浴の回数も極端に減ってきました。『このまま生きていても仕方がない。もう死にたい』とこぼすことも増えてきました。一日中布団の中で過ごすこともあり、布団の中で『あうう~』というようなうめき声をあげていることもあります。そんな長女と一緒にいると、こちらもおかしくなりそうです」
「それは非常に心配ですね。私は精神科医ではないので詳しいことは分かりませんが、それでもこのまま放っておくのは好ましくないと思います。ご長女も毎日つらいことでしょう。通院などで治療を再開したほうがよいかもしれませんね」
「そうですよね。私もそう思っていたのですが、きっかけがなくてずるずる来てしまいました」
まずはどの病院で診てもらうかを決めなければいけません。
今から新しい病院を探すのは大変ということだったので、以前通っていた病院の先生に会い、まずは母親から事情を説明してもらうことにしました。
「障害年金再開を私から先生にはたらきかけることはできません」
母親は胸の内を語りました。
「主人は仕事のため、私ひとりで病院の先生に会うことになってしまいます。私ひとりではとても不安なので、先生との面会時に同席してもらないでしょうか?」
家族ではない、しかも社会保険労務士の資格を持つ者が同席をする。病院の先生にとって、あまり気分のよいものではないでしょう。筆者は母親に告げました。
「もちろん同席するのは構いません。しかし、私が同席することで病院の先生が気分を害されてしまうかもしれません。そして、その影響がご家族に及んでしまう可能性も考えられます。そのような場合もあり得る、ということは覚悟しておいてください」
母親は黙って聞いています。筆者は続けました。
「障害年金が再開できるようにするために、私から先生に強引にはたらきかけることはできません。そんなことをしたら不正受給の疑いがかけられてしまうからです。なので、あくまでもお母様のフォローという形を取らせていただきます。また、私が同席をするとなると日当が発生してしまいます。それでもよろしいでしょうか?」
「はい。構いません。私ひとりでは何をどう話したらいいのかもわかりませんし、一緒にいてくれるだけでも心強いです」
「わかりました。では筆者も同席してよいかどうか、事前に病院の先生に確認を取ってください。もちろんご長女の了承も取ってくださいね。」
「はい。そうしてみます」
その後、病院の先生と長女の両方で確認が取れたので、筆者は母親と一緒に家族相談をすることになりました。