35年ぶりに誕生した駅長は12歳の男の子

あくまでも主役は乗客。抽選で選ばれた子どもが「小和田駅一日駅長」に任命するイベントもあった。この日駅長に選ばれた愛知県一宮市から来た12歳の男の子は、自宅で時刻表を読むのが趣味という鉄道ファン。「駅舎の裏側に入れてうれしい」と興奮した様子で、小和田駅の事務室で業務を行った。小和田駅は1984年までは有人駅だったが、それ以降は無人。実に35年ぶりに駅長が誕生するという、貴重な瞬間だった。

筆者撮影
小和田駅長に選ばれた3人。凛々しい制服姿で、ポーズがビシッと決まっている

乗客を楽しませてくれるイベントが満載で、おもてなしの心を感じずにはいられない。この日おもてなし担当として乗務したJR東海・運転士の伊藤大輔さんは「車内はとても楽しい雰囲気。秘境駅号は、皆さんに笑顔になってもらうために、そして地域のためにという思いで運行しています。秘境駅が好きな乗務員もいるので盛り上げたい」とコメントした。

筆者撮影
列車を降りれば雄大な自然はすぐそこ。これが秘境駅の魅力だ

旅行会社を介したツアーがチケット購入の穴場

秘境駅号が来年春に10周年を迎えるにあたり、同社大谷さんはこう語る。

「鉄道ファンの間で秘境駅の人気に火が付きだしたとき、効率よく回れる列車を、ということで企画されました。単線である飯田線の複雑なダイヤを縫いつつ、秘境駅の魅力を感じてもらうために、時間をかけて運行ダイヤを調整しています。おかげさまで運行当初から人気で、リピーターも多いです。今は宣伝効果もあってか、鉄道ファンからファミリー層へと客層が広がりつつあります。

ちなみに私の“推し”の駅は小和田駅です。秘境駅のエッセンスがすべて凝縮されており、まさに『なんでこんなところに?』という感じの駅ですが、歴史やストーリーが詰まっています。少し歩けば廃虚となった製茶工場や、ミゼット(かつての三輪自動車)があるなど、人の営みを感じます。これこそ秘境駅のロマンです!」

国内外から熱い視線が注がれる秘境駅号。インバウンド人気に火が付けばプラチナチケットとなり、さらに競争倍率が上がるだろう。大谷さんによれば、座席数を増やすことも前向きに検討したいが、まだ協議を重ねる必要があるとのこと。ここだけの話、駅の窓口よりも旅行会社を介したツアーの方が比較的チケットが取りやすいというから、チェックしておきたい。