ライブの物販で「つい買ってしまう」カラクリ

また、「Emotion(感情・感覚)」の面から「自分ごと化」を促している好事例として、最近の家具チェーン店で多く見られる、丸ごと一部屋を自社製品でコーディネートした展示が挙げられると思います。この手法は、売られている家具がどのようにコーディネートできるのかという情報を伝えると同時に、実際にその部屋で暮らした時の満たされた感情を覚えさせるという効果を持っています。

ひとたび「こんな家具に囲まれた部屋で暮らすのって、いいなぁ」と思ってしまうと、人はその気持ちから逃れるのが難しくなるもの。単に家具を1個1個並べるだけの展示では作れないこの感情を生み出すことに成功した、という意味で、この手法は革新的なものだったと言えるのではないでしょうか。

同じように「Emotion(感情・感覚)」をうまくくすぐっている事例として挙げられるのが、コンサートなどのライブイベントにおける物販です。CDの売り上げが激減している昨今、ミュージシャンの売り上げ確保の手段の1つとして注目を浴びているのが、ツアーTシャツなどの物販事業。ライブイベントによって極限まで感情が高まると、当然のことながらその熱い思い出を記憶に残すために、モノだって欲しくなるものです。

しかも最近だと、メジャーではないアーティストの場合は、メンバー本人がライブ後に売り場に立つこともあります。私も、ライブ後に疲れてるのに申し訳ないなと思いつつ、メンバーを一目見てみたいせいで売り場に並んだことがあります。

「好き」という気持ちを増幅させて購入に仕向ける

こうして特別な記憶とともにグッズを手に入れると、アーティストへの愛着もさらに増すもの。その意味では、アーティストとファンがお互いWIN‐WINに成長していけるという意味で、このやり方は現代の消費者心理にマッチしたとても良い方法だと思います。

この例に限らず、好きという気持ちを増幅するやり方は、「Emotion(感情・感覚)」に働きかけるうえで非常に有効な方法論です。

例えば車のディーラーで、愛車と同じ車種のミニカーをプレゼントするとか、そのメーカーの商品を使っているトッププロを招いて店頭でイベントを行うなどのやり方は、好きという気持ちを増幅し、欲しい気持ちを育てるうえで非常に大きな影響をもたらします。

好きになった人は、かなり高い割合でそのメーカーの上位商品の顧客となる可能性が高いもの。その意味では、「Emotion(感情・感覚)」をうまく活用することで、アップセル、すなわち購買商品のランクを上げていくことが可能になるのではないでしょうか。