お客さんに商品を買ってもらうにはどうすればいいのか。マーケティングに詳しい香月勝行氏、心理学者の妹尾武治氏、分部利紘氏は、「商品の価値が支払うお金に見合うか納得してもらうことが大切になる。そのためには、消費者側の意見を見せるのが有効だ」という——。

※本稿は、電通九州・香月勝行、妹尾武治、分部利紘『売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

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人が物を買おうとするときの心の動き

我々は、人にモノを売り込むときの新しいモデル「A・I・D・E・A(アイデア)」を提唱しています。これは、かの有名な「A・I・D・M・A(アイドマ)」を今の時代に合わせてアップデートしたもの。 「A・I・D・E・A(アイデア)」 の5つのステップを繰り返すことが効果的であることが、我々の研究から明らかになっています。

最初が、ニーズに目を向けさせる「Awake(気づき)」。続いて、商品がニーズを満たす存在であると認識する「Identify(認識)」。それから、納得のために商品価値を自問自答する「Discussion(対話)」。さらに、感覚的にも満たされた気分になる「Emotion(感情・感覚)」。そして最後が、対価が妥当かを判断し行動する「Action(行動)」。

この5つのステップを、消費者にしっかりと走り抜けてもらうこと、それがモノを売るために欠かせないやり方だということになります。

このなかで、「Discussion(対話)」および「Emotion(感情・感覚)」の検討ステップはとても重要な役割を担います。にもかかわらず、これらの行為はお客様の心の中で行われるため外からは見えにくく、そのせいで対策が難しいという面も持ちます。ゆえに、実際にモノを売る現場では、ここの打ち手が不足しているケースが非常に多いように思われます。

そこでここでは、具体的にこの部分の打ち手としてうまく機能している事例を紹介しながら、「Discussion(対話)」「Emotion(感情・感覚)」施策の精度の向上について考えてみようと思います。