コロナ禍初期に社会問題化した「パニック購買」
コロナ禍初期、食品や日用品を過度に買い占める“パニック購買”が社会問題になりました。そのとき実際にどのような人たちがパニック購買したのでしょうか? こうした問いを立てながら、筆者らの研究グループでは、その特徴をデータから明らかにしていくことに取り組みました。
具体的には、20~69歳の3万8213人から収集した約3年分の食品・日用品の購買データを使って、市場において「急激な購入の増加」が起きたタイミングや、そのときに購入された商品の特徴などを分析しました。これに加えて、消費者心理を捉えるアンケート調査やモバイル・テレビの視聴ログといった行動データを同一の調査対象者から収集し、最終的にすべてのデータがそろった968人を、多面的な視点から詳細に分析していきました。
通常時よりも何をどれだけ多く買っていたのか
パニック購買自体は昔から非常によく知られた現象です。この現象は災害や感染症流行の直後によく起こります。日本だけでなく、世界中でも起こるものです。コロナ禍初期も、世界各地でこの現象が観測されました。当時よく、ニュースでも、店頭に大勢の人が押し寄せて混雑している様子や、空っぽになった棚の映像などが放送されていたことが印象的でした。
一方で、パニック購買を実際の消費者の購買データを用いて分析した研究はこれまで限定的でした。そこで、筆者らの研究グループでは、多面的なデータを使いながら、この行動を理解していくことを試みました。その際、いくつかの新しい視点を加えていきました。
まず1つめは、特定の商品(例えば、トイレットペーパーなど)だけでなく、食品や日用品の購買を全体的にみたときに、どのような買い溜め行為が起きているかを理解していくことです。つまり、本来必要ではないくらいの大量の商品を、商品カテゴリをまたいで買っている人たちを理解することを試みました。こうすることで、特定商品の購買行動とは少し違った視点から消費者像を分析していきました。
2つめは、個人単位の長期的な購買データを使って、過去の自分自身の購買状況と比較して分析することです。これにより、「(コロナの影響を受けていない)通常時よりどれだけ多く買ったか」に着目して消費者を捉えていきました。