認知心理学用語「スキーマ」のメリットとデメリット
学習であれ、経験であれ人間はスキーマを作ることで思考をショートカットして、勉強でも仕事でも処理能力が増してくる。その一方、スキーマがあると、ほかの思考ができなくなったり、ものごとを決めつけてしまったりという弊害もある。
実際、認知心理学者の研究では、いったんこのスキーマができてしまうと、それがその後の情報処理や思考に大きな影響を与えることがわかっている。一般原則としては、そのスキーマが正しいと信じるように働いてしまうのだ。
ロヨラ大学心理学科のユージン・ゼックミスタとジェームズ・ジョンソンによると、スキーマを作った後の人間の情報処理は以下のように変わる。たとえば、ある人が「血液型がA型の人はまじめで几帳面」というスキーマを持ったとして説明してみよう。
「やはりA型の人は几帳面だ」という思い込み
第一に、スキーマと一致しない情報より、一致する情報に注意が払われるようになる。たとえば、血液型がA型で「時間に几帳面である半面、整理整頓はルーズな人」がいた時、時間に几帳面な側面にばかりに着目し、整理整頓のルーズさを無視してしまう。その人と待ち合わせをしていて、時間通りに来ると「やはりA型の人は几帳面だ」ということになってしまうのだ。
第二に、スキーマと一致しない情報を受け入れにくくなる。その人の机の上がごった返していても、「A型にしては例外」「一時的なものだろう」「頭の中での整理はできていて何がどこにあるのかは把握しているはずだ」と自分のスキーマが間違っている可能性を考えずに、その情報を否定する方向で考えてしまう。
第三に、スキーマと一致する情報のほうが一致しない情報より覚えやすくなる。その人についての記憶としては、待ち合わせの時間通りに来たことは記憶に残るのだが、机の上がごった返しているのは忘れてしまいがちになる。
第四に、スキーマと一致するように記憶を歪ませることもある。そのごった返していた机の上の書類の中で茶色い大きな手帳のようなものを見たとすると、勝手にシステム手帳がおいてあったと記憶してしまうことがあるのだ。そうなってしまうと、その記憶は疑えなくなる。「今でもスマホに頼らず、システム手帳を使うのは、やはりA型だね」ということになってしまうのだ。仮に、その人が「システム手帳なんか使ったことがない」と答えても、自分の見間違い、覚え間違いとは考えずに、「あのときに机の上に置いてあったじゃないの」と問い返すかもしれない。