「それまで柔道整復師は儲かる仕事でしたが、競合が増えたことで経営が大変になっていきました。本来の治療の対象である外傷もそんなに多くないため、肩こりや腰痛の治療も診るようにシフトしていったのです。柔道整復師が整骨院を開業し、あん摩マッサージ指圧師を雇ってマッサージするのであれば、問題はありません。しかし実際は、勤務する柔道整復師や鍼灸師が、専門外のマッサージに従事する施術所もあります。現場では『なんで専門外のマッサージをやらなければいけないんだ?』という不満がくすぶる。そういう環境は、えてして事故が起きやすくなります」(同)
極端な例になると、院長だけが資格を持っていて、無資格のアルバイトに施術をやらせてしまうところもある。業界関係者は「研修3日で現場に出すというケースも耳にします」と語る。
「ただし、整骨院で気をつけるべきは健康被害よりも、金儲けに熱心な院でしょう。同業者との競争が激しいため、高額な回数券を販売したり、1度来た客に『次はいつ来られますか?』としつこく勧誘する院が後を絶ちません」
一方、鍼灸院で起こりがちなトラブルがセクハラだ。病院で治らなかった利用者が治ると、術者はカリスマ化しやすい傾向がある。その信頼から普段は見せないような体の部分も見せて、後々、熱が覚めた後、セクハラとしてもめるケースが散見されるという。
知識不足の術者を見極める方法
信頼できる施術所はどうやって見分ければいいか。鍼灸院口コミサイト「しんきゅうコンパス」を運営するカリスタ代表取締役・前田真也氏に聞いた。
「腰痛や関節痛は大別すると、関節や筋肉の機能障害によって痛む筋骨格系の症状と、ストレスなどで自律神経が乱れて痛む心因性の症状があります。近年、腰痛の多くは心因性によるものということが常識になる中で、理解していない術者もいるのが現状です」
知識不足の術者はどう見極めるか。施術の際、痛みの原因を説明できるかは大きな判断材料になるという。
「ちゃんとした術者は解剖学と生理学を学んでいるため、体がどういう構造で、どういうメカニズムで痛みが発生するかを理解しています。『なんでこんなに痛いんですか』など、疑問はどんどん質問しましょう。そこで納得するまで説明してくれる術者は、信用できる見込みがあります」(前田氏)
中には、痛みの原因を「体の歪み」「背骨」など、なんでも一点に持っていって説明する術者もいる。しかし実際は足関節の緩みが不良姿勢を招き、肩関節痛につながることも。「一点型」の術者は、全身を観察せずに原因を決めつけている可能性がある。