男子御三家は生徒が何かに没頭する仕掛けを用意している
わたしはこの度『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(文春新書)を著した。その中で、男子御三家の一角、武蔵の副校長・高野橋雅之先生が次のように話していたのが印象に残っている。
「女子はスマートに物事に取り組んでいくような性質があります。それに対して、男子にそんなきっちりとした性質はあまりない。ウチの生徒たちを観察していてつくづく思うのは、男子は一見無駄に思えることに果敢に取り組み、底力を蓄えていくようなところがあります。そして、突発的に起こるいろいろなことを面白がれる性格を持つ子はやはり男子に多いように感じています。そういう子は何か目標が見つかった途端に一気にその目標に向かって突き進むようになります」
執筆する際、男子御三家各校の学校関係者や卒業生たちに取材したが、どの学校も男子生徒たち一人ひとりが目指すべきものを見つけるための「仕掛け」を用意していた。それが、結果的に東大合格者数にもつながっているのだ。
男子御三家を超える学力レベルの学校もある
麻布・開成・武蔵の男子御三家を含めた首都圏(1都3県)の主要な中高一貫の男子校についてその現状を俯瞰していきたい。四谷大塚主催「合不合判定テスト」偏差値一覧表を見てみよう(偏差値は合格判定80%ラインを示す)。男子校にしぼって1985年度(昭和60年度)と2019年度(令和元年度)の中学入試における偏差値一覧表の比較である。この35年間の各校のレベル推移が一目で分かるようになっている。
35年前と比較して、全体的に少しレベルダウンしているように感じるのは、男子・共学校の数がこの35年で激増し、優秀層の選択肢が多岐にわたるようになったからだ(特定の学校に優秀層が集中しない時代へと変わった)。
また、レベルの高い共学進学校(たとえば、渋谷教育学園渋谷、渋谷教育学園幕張など)が台頭したことも大きく関係していると分析できる。そういった事情を勘案しつつ、この表を見ると、男子校の立ち位置の変化に気づくことがある。
それは麻布・開成・武蔵の男子御三家が、偏差値では必ずしもトップに位置付けられているわけではないということだ。むしろ、それ以上の学力レベルの男子校も登場しているのだ。