大学入試改革で御三家の武蔵が復権するワケ
男子校35年間の偏差値推移表では、筑波大学附属駒場、開成、麻布がずっと高いレベルをキープしていることがわかる。少し苦しいのは武蔵である。1985年度の偏差値は72だったのに対して、2019年度は63と9ポイント下げている。武蔵の大学合格実績に物足りなさを感じる保護者がいることと、武蔵はアカデミックな独自の取り組みが魅力だが、反面、大学受験をあまり意識しない教育内容ゆえ、わが子の出口(大学入試)に不安を抱く保護者がいるのだろう。
しかしながら、塾講師としての目で分析すると、武蔵はこの2~3年で優秀層の取り込みに成功しているように感じている。2013年度はそれまで3倍前後あった入試実質倍率が約2.4倍にまで落ち込んだが、最近は再び3倍前後に戻している。
また、武蔵は2020年度(令和2年度)と2024年度(令和6年度)に大きなメスを入れる大学入試改革の目指すところ(知識偏重型から思考力・判断力・記述力などを重視するようになる)と武蔵の教育内容が合致していると期待する層が増えたのかもしれない。わたしは今後、武蔵がさらに復調すると予想している。
「御三家」が凋落しないカラクリ
麻布や開成、武蔵の学校関係者・卒業生たちは自らの学校を「男子御三家」などとは口にしない。それは、わが校は単独で魅力あふれるところなのだという自負があるからなのだろう。
しかし、わたしは「男子御三家」という1960年代に生まれたこの呼称に各校が助けられたことがあるのではないかと見ている。たとえば、先に武蔵の凋落に言及したが、それでも、一気にレベルダウンしなかったのは、武蔵が「男子御三家」の一角だったからだと考える。
なぜか。首都圏の中学受験塾の多くは「男子御三家」「女子御三家(桜蔭・女子学院・雙葉)」に何人合格者を輩出するかで競っている。つまり、塾の中での成績優秀層をこれら「御三家」に誘導していくのである。ちょっとやそっとで「御三家」が凋落しないというのはそういう要素もあると思う。