大人は子どもたちに何を残していくのか
前述したように、長島は地域一体となって子育てをしている。核家族化や児童虐待が連日取り上げられる昨今とは対極の社会が作品の中でも描かれている。距離が近すぎるあまり、デリケートな部分に触れすぎてしまうことだってある。ただ、そのような社会が今なお日本に残っている、それを知るだけで救われる人だってきっといるだろう。
そして、日本にはさまざまな家族の形がある。どこで暮らそうが、どんな家族の形であろうが、未来を生きる子どもたちに大人は何を残していくのか……。作品を見ている人自身に考えるきっかけを投げかけ続けている。
公開に先立ち、島内で町民向けに実施した完成披露試写会では「期待以上」という声が多く集まった。作品に触れる感想も多く、「ひと言で“良い映画”とは言い尽くせない心に刺さる映画だった」「地域で子どもを育てる意味を改めて考えさせられた」、このような声が寄せられた。東京で行われた試写では「舞台はローカルなのに、テーマはグローバルだ」という評価も受けた。
地域が地域を再発見できる、それは地方映画のあるべき姿なのかもしれない。「夕陽のあと」はそれを丁寧に突き詰めていった。その結果、よそで暮らす人にとっては“長島で生きていく”という選択肢になりうる。そんな思いがめばえてくれたら、と願っている。