しかし、最近は物件価格の上昇に伴い6000万円程度の住宅ローンを組まざるをえない夫婦も多い。さきほどと同じ条件で6000万円の住宅ローンを組むと毎月の返済額は約17万5000円へ上がる。
決して贅沢をしているわけではなく、共働きを続けるためにやむをえず購入しているわけだが、定年時にどの程度の住宅ローンが残るかをまずは計算しておいたほうがいい。
一方で返済を焦らないことも重要だ。35年返済で5000万円の住宅ローンを組むと毎月返済額は約14万6000円だが、仮に購入年齢が35歳なら完済は70歳になる。定年後も返済が続くのは不安だからと、60歳までに完済しようとすれば、毎月返済額は約5万円もアップして約19万3000円となる。支払えたとしてもまったく貯蓄ができない状態になるかもしれない。金利が低い今、住宅ローンをゆっくり返済することは資金繰りを重視した立派な選択肢の1つであると考えたい。
手元に一定の貯蓄が必要なのは、不測の事態に対応できるようにしておくため。言ってみれば「生活防衛資金」。最低でも1年分、できれば2年分の生活費相当額を現金で確保しておきたい。
▼5大リスク(2)奨学金
「実家暮らし」なら子にかぶせてOK
不足する老後資金を賄う3つの方法の「貯蓄する」に大きくかかわってくるのが子どもの教育費だ。特に負担が大きいのは大学の入学・在学費用だ。日本政策金融公庫の調査によると、私立大学文系に進学すると、4年間で約730万円が必要になる(図3)。子どもが2人、3人となれば、莫大な負担を強いられることになる。
なんとか支払いができても、そのツケは老後資金に回ってくる。これを回避する方法は奨学金を利用することだ。
「学費ぐらいは出してあげたい」と考え、はなから奨学金の利用を考えていない人は多い。その背景には、2年ほど前に話題になった奨学金トラブルがある。多額の借金を抱えたまま社会人になり、「返済に窮するケースが増えている」と問題になった。
しかし、短絡的に「奨学金は怖い」と決めつけるのではなく、丁寧かつ慎重に考えるべきだ。返済に窮する典型的なパターンは「地方出身で都市部(東京)の大学へ進学し、なおかつその地で就職した人」だ。そうでなければ、過剰に怖がる必要はない。実家暮らしであれば、アルバイトでも奨学金を返済できる。
大学4年間で500万円の学費がかかるとすれば、その半分でも奨学金を利用すれば親の負担は楽になる。