正しさで周りが見えなくなっている
ツイッターでつぶやいてくれよと言いたいのを我慢して「そうですね」と言ってしまったのが運のつき。お局様は「トイレに何回行けばすむのか」「歩いて5分の郵便局へ10分かけて行く」「終業時刻ジャストで席を立つ」「ヤバくない?」「ダメでしょ?」などと不気味にささやき続けたのである。
15分の行方不明を非難する人が、20分も僕の傍らで怨念マントラを唱えている異常事態。正しさで、周りが見えなくなっている。30年以上の時を超えて、募金ちゃんの亡霊に悩まされるとは。もっとアフリカに思いを馳せておけばよかった。
お局様は言いたいことだけ言って僕の傍らから離れるとヒタヒタと別の人間の脇へゴー。そこでまたつぶやきはじめた。「ヤバいよ。ヤバいよ。ヤバいよ……」何を食ったら怨念をエネルギーに変換できる人間になれるのだろうか。
僕はお局様の独りキャッチボールを跳ね返し続ける壁
僕は数日に1度のペースでお局様の正しさの証人にさせられている。露骨に聞いていないポーズをとっているが、効果はない。あるはずがない。彼女は誰かに話をしているわけではないのだから。彼女は己の正しさに対して話しかけているだけなのだ。
そう、僕は壁なのだ。お局様の独りキャッチボールを跳ね返し続ける壁。早く人間になりたい!
このように、人の行動が気になる症候群の方は、第三者を巻き込んで己の正しさを証明しようとする。第三者が話を聞いていようがいまいが関係ない。第三者を巻き込むことで証明は完結している。
精神を削られ消耗するのは、いつも善良な市民。もし人の行動が気になる症候群の人が「ヤバいよ、ヤバいよ」と言いながら近づいてきたら、無視スルーしてもらいたい。台風の日、氾濫した河川が気になったり心配したりはするけれど、見に行かなければ、絶対に流されることはない。それと同じことなのだ。