徳井さんにはこころのケアが必要だったのではないか

重加算税の対象となるかどうかの判断は、平たく言うと、

“わざとやったのか、知らずにそうなったのか”

である。

国税当局が重加算税を賦課しなかったのは、形式基準もあるが、そのような、徳井さんの特質を加味してのこともあったかもしれない。

筆者は、元受刑者や統合失調症の方のこころのケアを行った実績もある。徳井さんは、どうしようもない自分を、どうしていいのかわからないというスパイラルに入ってしまっていたのかもしれない。筆者は、徳井さんも、こころのケアが必要だったと推測する。

もし、収録の日が、チュートリアルが出演される回であったら。

筆者が徳井さんとお会いすることができていたら。

「飯田先生、ちょっと税金のことで、誰にも言えなくて困っていることがあるんですけど……」

と相談を受けていたかもしれない。そうすれば、記者会見のやり方も、もう少し違ったものになって、いたかもしれない。いやいや、“もし……。”や、“たら……。”ということを言っても始まらないが……。

世間の税に関する興味は高まっている

3年前、各国首脳を含む著名人らとタックスヘイブン(租税回避地)の関わりを明るみに出した「パナマ文書」が公表され、多くの人が「税金逃れ」の実態を知ることとなった。名だたる企業であっても、合法的に日本に納税していない企業もある。知恵があってお金があれば、納税を免れてもいいのか。今、納税に関する倫理観が問われているともいえるだろう。

筆者は、以前、近畿税理士会で租税教育推進委員を務めていたことがある。自分が所属している支部の小学校や中学校で、税金についての話をするのである。

筆者が子どもの頃は、学校の教科書に税金のことが書かれていても、実際に授業の中で取り上げられることはなかった。消費税が導入されてから、子どもも、毎日の買い物する際に、消費税を身近に感じるようになったこともあるだろう。税に関する興味は高まっていると思う。

日本では、申告納税制度をとっている。そうはいっても大半がサラリーマンで、所得税は源泉徴収で給料から天引きされているので、税金を取られたという実感は薄い。一方、個人事業主や、中小企業のオーナー経営者は、自らが申告書を作成し、納税しなければならない。汗水たらして稼いだお金は、税金で払うよりも、1円でも多く自分の手元に残しておきたいと思うのが人情というものだろう。