吉本興業が運営する芸人の養成所・NSC。漫才ブームに乗って設立され、1期生としてダウンタウンやトミーズなどのコンビを輩出した。同社でプロデューサーを務めた竹中功氏が、NSCの設立秘話と知られざるダウンタウンの下積み時代を紹介する――。
※本稿は、竹中功『吉本興業史』(角川新書)の一部を再編集したものです。
「学校つくれや!」の一言でNSC設立
「竹中、商品(芸人)が足りへんから学校つくれや!」
当時、担当役員だった中邨にそう言われたのは、入社した年の10月のことだった。宣伝広報室に配属されてから、3カ月目。『マンスリーよしもと』の編集長になったのと同じように突然、そう告げられたのだ。
「そんなこと言われても無理です。ボクはまだ芸人さんと話したこともほとんどないくらいですし、お笑い芸人なんかつくれるはずがないですもん」
「大丈夫や。この会社で芸人をつくった社員なんか誰もおれへんのやから、誰がやってもいっしょや。せやから、お前、やっとけ」
言ってることは、上司の冨井と変わらない。どうもこの2人の上司のコンセプトは、いっしょのようだった。誰もやったことがないから誰がやってもいっしょだという理屈はどうかと思う。そんな言葉に納得できるはずがない。とはいっても、私はサラリーマンだ。上役の命令は絶対だと思っていたので、拒むことはできなかった。