「もう片方の親が亡くなったとき」の相続に注意

子どもが経験する相続は、

・父親が亡くなったとき
・母親が亡くなったとき

の2回あります。どちらが先かはわかりませんが、子どもは親の相続の心配を2回しなければならないということです。

1回目の相続では配偶者の税額軽減を使って相続税を逃れたとしても、2回目の相続ではお子さんだけで相続をしますから、税額軽減は使えません。

「父の相続では相続税がかからなかったので安心していたら、母の相続のときに多額の相続税が発生してしまった……」

これは子どもにとって、相続失敗の典型例です。

1回目の相続の場合には、「配偶者の税額軽減」のほかに、あとで説明する「小規模宅地等の特例」も使えますから、相続財産の評価額をかなり圧縮することができ、相続財産がそれなりにあったとしても、みなさんにもお子さんにも相続税がかからない場合があります。

しかしながら、2回目の相続では、これらの特例を使うことができなくなって、一気に相続財産の評価額が増し、お子さんが支払う相続税が増えることがあるのです。

そこで、相続税のシミュレーションをするときには、2回目の相続まで考えておくことが大事です。

子どもに多く相続させた方がいい場合もある

「お母さんがこんなに財産をもっていたなんて!」

こんな子ども側の嘆きもよく聞きます。これは、父親の相続のときに、配偶者の税額軽減を使うために母親が相続したら、実は母親は自分自身の親の財産も相続していて、財産がたくさんあったため、いざ子どもたちが相続するときには、ものすごい税金を支払うことになってしまったというケースです。

相続税の税率は「累進税率」といって、財産の金額が多ければ多いほど税率が高くなる仕組みになっています。

相続人それぞれが相続する財産の金額(基礎控除を差し引いて計算)が1000万円までの税率は10%ですが、財産の金額によって段階的に税率が上がっていき、6億円超の金額には55%という税率がかかることになります(図表2参照)。

ですから、財産をもっているあなたがパートナーの財産を相続してしまうと、子どもが2回目の相続で支払う相続税の金額が増えてしまい、結果としてまったく節税につながらないということがあります。

もちろん、何も対策をしていない場合には、1回目の相続ではみなさん自身が相続をして、時間稼ぎをすることも大事です。

ですが、みなさんの財産の金額によっては、1回目の相続のときに多少税金を支払ってでも、財産を子どもに相続させたほうが、相続をトータル(2回分)で考えたとき、相続税が安くすむことがあるのです。