宗教法人は税制面で優遇されており、例えばお布施には税金がかからない。信者数の多い巨大宗教法人であれば、非課税額は莫大だ。「宗教法人非課税制度」は見直すべきなのだろうか。青山学院大学学長の三木義一氏は、「大規模な宗教法人は課税されても深刻な影響はない。小規模の宗教法人はそもそも所得がどの程度あるのか」という――。
※本稿は、三木義一『税のタブー』(インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。
宗教法人のお布施が「非課税」なのは不平等か
新聞の投書欄やインターネットなどにも、庶民は税金で苦しんでいるのに、宗教法人がすごく優遇されているではないかとか、お布施には税金がかからないし、暴力団が脱税のために休眠宗教法人を買いあさっているではないか、との批判がよく掲載されています。
ですから、読者の中にも、宗教法人非課税制度を見直すべきだ、と考えている人が少なくないかもしれません。中には、「坊主丸儲け」という言葉が宗教法人非課税を揶揄した表現だと思っている人もいるかもしれません。
しかし、この言葉は丸坊主にかけたしゃれのようで、お布施などは経費がかかっていないので、収入がそのまま丸儲け(所得)ではないか、という意味のようです。お布施のための経費がないとは厳密にはいえませんが、庶民感覚としては理解できますし、所得税の大事な視点が含まれています。
所得は収入から経費を引いた差額です。ですから、収入がいくら多くても経費がそれ以上なら所得はありません。逆に収入が少なくても経費がないなら、収入金額が所得になります。となると、お布施のように少額でも所得を得ているものは所得税を払わねばならないはずです。ところが、お布施は非課税です。やっぱり不公平、ということになりそうですね。そこで、少し宗教法人非課税制度を検討してみましょう。