風俗の女の子は全員辞めたくて働いている
具体的には、まず客の目を見て接客を行った。夢のない話かもしれないが、風俗の女の子は全員辞めたくて働いている。だから、客を心に入れたいとは思っていない。だけどお客さんは可愛い女の子と目を見て話したいと思っている。だからその願望をかなえてあげたら……ということだ。
目を合わせながら私は「今日はホストでいくら使おうかな」などと考えていたのだけれど。
そして常連となった彼らに対して、私は自分を安売りしなかった。私が働いていた風俗は高級店に分類される店だった。経済的に余裕がある客との付き合いが長くなると、風俗の女の子たちは甘え始める。「今月の家賃が支払えない」だったり「携帯が止まる」と、何かと理由をつけてお金をせびる。私はそういうことをしなかった。
自分の中で完結した最悪の状況を想像するお客たち
すると、彼らは「私から特別扱いされている」と思い込むようになった。彼らは私に執着心や独占欲を持ち始め、地方から毎週のように上京してきてまで、私を独占するために長時間指名した。
さらには妄想の中で理想の私をつくり上げ、「ほぼ毎日のように出勤して稼いでいるはずの私にお金が必要なのは、きっと私に1人ではどうしようもない金額の借金があるからだ」と最悪の想像をして「お金に困っているのなら、僕が工面するから、僕の前からいなくならないで」と、100万円単位のお金を渡されたこともあった。
そもそも、私はお金には困っていないし、彼らよりも数倍多い収入を得ているのにだ。彼らは、自分の中で完結した最悪の状況を想像して、窮地に陥っている私を救い出せば、私の気を引けると思ったのだろうか。