産経社説は「天皇や日本人へのヘイト表現」と断言する

産経社説に戻ろう。

「昭和天皇の写真を何度も燃やし、最後にその灰を土足で踏みにじる動画がそうである。昭和天皇とみられる人物の顔が剥落はくらくした銅版画の題は『焼かれるべき絵』で、解説には戦争責任を『日本人一般に広げる意味合いがある』とあった」
「韓国が日本非難に用いる、『慰安婦像』として知られる少女像も並んだ。英文の解説には、史実でない『性奴隷制』とあった」
「『時代の肖像-絶滅危惧種 idiot JAPONICA 円墳-』という作品は、出征兵士への寄せ書きのある日の丸が貼り付けられていた。作品名の英文などを直訳すれば『馬鹿な(間抜けな)日本趣味の円(まる)い墓』だ」

産経社説はこうした指摘を並べた後、こう断言する。

「『日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』である天皇や日本人へのヘイト表現といえる。だから多くの人々があきれ、憤った」

「ヘイト」で朝日を揶揄、攻撃、挑発したい産経社説

こうして読み進めると、「朝日はヘイトを許すのか」(産経社説の見出し)の意味が理解できる。産経社説は企画展「表現の不自由展・その後」での作品の一部が天皇や日本人に対するヘイト表現だと強調したいのである。

だが待ってほしい。これまでのヘイトとは言葉の用い方が違う。

ヘイトとはヘイトスピーチのことだ。日本でよく知られるようになったのは、韓国や韓国の人々への暴言を非難するためだった。その後、韓国だけでなく、他の特定の個人や集団などを差別・攻撃する言動にも使われるようになった。

それゆえここは産経社説のように「天皇や日本人に対するヘイト表現」と書くよりも、「非常識な表現」とした方が分かりやすいし、適切だ。

産経社説はあえてヘイトという言葉を使ったのだ。皮肉を込めた言葉で、朝日社説を揶揄している。つまり朝日社説を挑発しているのだ。