気象庁は台風進路の精度向上のためスパコンを導入

同社は、AIで分析したソフトを地方自治体に提供することも行ってきた。

昨年(2018年)のNHKスペシャル「人工知能 天使か悪魔か 2018 未来がわかる その時あなたは…」では、鹿児島県姶良あいら市の取り組みが紹介されていた。姶良市ではWN社の提供データを使い、2018年の台風7号の際、地域住民に対して公民館などへ早めに避難するよう呼びかけた。高齢者の多い地域なので、夜に台風が接近してからの避難は、転倒などの危険が伴う。行政の避難勧告放送や住民の素早い対応もあり、被害を最小限に食い止められた。

こうした手法を、もっと大々的に台風情報に応用できないのだろうか。

気象庁は昨年、台風進路の精度向上を目的にスーパーコンピューターを導入しており、今年6月には「台風の進路予報の改善について」という報道発表を行っている。「台風の進路予報において、予報円及び暴風警戒域をより絞り込むとともに、予報の信頼度をより的確に表現する形で発表します」というもので、予報円の半径を平均で約20%小さくするという。気象予測に関わる関係者は「5年前に比べると格段の進歩」と話す。

資料=気象庁

台風の進路がどこを通り、どこが東側に入るのか

ただし、9月に発生した台風15号では、上陸前に予想進路が微妙にずれていき、上陸場所もなかなか定まらなかった。前述した大規模停電も起き、千葉県を中心に多くの人が不自由な生活を長期にわたり強いられることとなった。

「今も復旧していない地域もあり、誇る気はありませんが、弊社の予報センターでは独自の観測データの気圧の変化から、千葉市付近への上陸を予想していました。一般的に台風の進行方向の右側は、風が特に強まりやすい(危険半円)とされており、台風15号でも、停電被害は台風の進路の東側だった千葉県で特に大きくなっています。

台風15号がもう少し西寄りの進路をとり、東京都が台風の東側に入っていたら、被害はもっと大きかったかもしれません。台風の進路がどこを通り、どこが東側に入るのかを詳細に知ることは、今後、被害を想定するために欠かせない情報です」(石橋氏)