「貴重なお話を賜ることができ……」はダメ
ヒアリングはイーブンに終われ――。議論の目的に向けて論理的な対話ができれば相手も「自分の頭も整理された」と感じるだろう。あなたとの対話によって、対話終了後、相手も一定の満足感を得られるというのは大事だ。こいつと話してよかったと思われるかどうかである。
また目的が共有されていない場合に議論の最中に相手の関心が急速に薄れることがある。「その話題は関心ないなぁ」「今話すべきことはこれなの?」といった何とも言えない雰囲気が漂う。
ひとたび時間の無駄だと思ったとたんに、首を回しながらこりを和らげる素振りなんかも見せたりする。要は早く帰ってくれというサインだ。このような場合はそれまでの対話のポイントを頭のなかでフレームワークに落とし、それをベースに自分の得られた意味あいを示しつつ次の質問を進めることとしたい。相手が「なんだ、意外によく整理されているな」と思えば、再び議論に戻ってくれる可能性がある。
いずれにせよ、相手の関心事も考えずに自分の聞きたいことだけ聞いて、あとは「本日は貴重なお話を賜ることができ……」といった通り一遍のメッセージを送るだけとなると、二度と相手にしてくれないだろう。これは悪気なくやっている人が多い。
共通点その3「コンテンツが整理されていない」
3つめの共通点は、「コンテンツが整理されていない」という根本的問題だ。以下の3点は特に注意したい点だ。
まず、すでにピラミッドストラクチャーの重要性などは世の中に理解されていると思うが、自分の伝えるべきこと、そのメインメッセージが何かというだけでなく、「そのメッセージをどの程度コンパクトにできるのか」は、頭が整理されているかどうか相手が判断するための大事な情報になる。
たとえば、会議の初会合での自己紹介等の段階も要注意だ。10人以上も出席している会議で、1人5分もかけたら、すぐに「その説明だけで会議時間がなくなってしまうこともわからないのか、空気の読めないやつだ」というような目で見られるだろう。最初の発言の前に、まずは自分の持ち時間はどの程度にすべきかを瞬時に考える必要がある。
2点目として、最初に用意したコンテンツを伝えるだけでなく、相手の視点や異なった意見によって、そのコンテンツをさらにレベルアップしていくことを考える必要がある。
多様な人が集まることには意味がある。意見の違いによって生まれる集合知、あるいは集団的IQを導くためには、検討課題を明らかにしたうえで、対話を通じてお互いの意見を促し、議論の質を向上させていくことが必要だ。対話ではなくあらかじめ用意した資料を延々と読みあげるような人、相手の言うことにうなずきながらメモをとるだけの人、などは会議の目的を理解できない、いても役に立たない、空気の読めない奴ということになる。
3点目は、「コンテンツが整理されていない時には、通り一遍のプレゼンテーション技術もたいして助けにはならない」ということだ。プレゼンでごまかそうとしてもすぐ見抜かれる。内容が伴わない、あるいは筋が通らないことを、派手なプレゼンテーションで煙に巻くということがよく見られるようになった。気を引くワードや派手な仕掛けなど本質とはかけ離れたアレンジをもってして「プレゼンテーション技術」などともてはやされる。
コンテンツが整理されていない段階でプレゼン技術にはしっても、そこそこの相手は煙に巻けても集合知を求める人には通用しないだろう。それこそ「中身がないのに仰々しくプレゼンして、空気の読めない奴だ」ということになるリスクは大きい。