いい会社とはいい人が集まっている会社——それを体現しているのが、高知市のディーラー、ネッツトヨタ南国だ。「全社員が勝利者になる」ことを最優先し、顧客満足度の高いサービスを実現、業績も好調に推移している。創業以来経営に携わってきた横田英毅取締役相談役に話を聞いた。第2回は独自の採用、人材育成について掘り下げていく。
ネッツトヨタ南国が創業以来力を入れ、資金も投入してきたのが採用だ。会社の魅力を伝えるべく、スタッフが働く姿で埋め尽くした広告。

2ランク上の人材を採用するために

——会社トップの横田さん自らが採用を担当するなど、創業時から採用、人材の育成を重視してきたのはなぜですか。

【横田】ディーラーの経験もない、ずば抜けた能力もない、そんな私がどうすればいい会社がつくれるか、と創業当時に思いを巡らせたのが事のはじまりです。それにはいい人材を採用すればいいだろう、と考えて、最初の10年間は私が採用の仕事も担当していました。その間採用に使ったお金が1億円以上。同業他社の5倍以上の費用と3倍以上の労力をつかっています。いまでもその姿勢は変わっていません。面接に最低で30時間、多い人には200時間もかけることがあります。採用に関与する人間は100人以上です。社員のほとんどが関わっているといっていいでしょう。それで今年採用したのは、男性1人、女性1人の計2人です。

——横田さんが考える採用したい人材、いい人材とは?

【横田】採用にあたっては、人柄と価値観がわれわれの会社に合っているか、一言でいえば人間力を重視します。

それに加えて意識したことは、優秀な人材を採用することです。在籍している社員と同じレベルの人を採用していたのでは、なかなかいい会社にはなりません。下手をすると衰退してしまいます。どのくらいのレベルの人を採用すればいいのか、と考えました。1ランク上の新入社員を採用できたとして、10年先輩を超えるのが5人のうち1人か2人しか見込めない。というのは、それほど能力ない上司や先輩の下につくと、人は育たないからです。これだと、いい会社をつくるのに、50年ほどかかってしまう。2ランク上の人材を採用すれば、10年先輩の指導的立場の人を超えるのが5人のうち2人か3人くらいは出てくるだろう。これなら、そんなに年数がかからずにいい会社がつくれるかな、と考えました。創業時の10年間、私が採用を担当していたときに2ランク上の人材だと見込んで採った社員が成長して、いまでは社長や役員、子会社の社長などをやっています。

——そういう採用を続けることでいい会社へと変わっていったわけですが、たとえば退職率はどう変わりましたか?

【横田】1980年の創業時から最初の10年間の退職率は、トヨタディーラーの全国平均と同じ8~10%でした。次の10年間は4~5%まで下がり、その次の10年間では1~2%になって、それがいまも続いています。

若手社員からトップに至るまで人を育てる土壌を30年以上かけてつくりあげてきました。今年の新入社員歓迎会の席では、入社2年目の先輩社員がこう言っていました。「仕事は厳しいことがいっぱいあるけれど、何があっても私たちがあなたを守ります」と。これは、管理職クラスが言うレベルの内容です。