敗者を生まない人事制度とは?
——話を聞けば聞くほど、ユニークな会社経営をしていますね。その根底にあるものは何でしょう。
【横田】経営理念はいくつかあるのですが、社員皆が覚えている項目が一つだけあります。それが「全社員が人生の勝利者になる」。私が一番大切だと考えていることです。営業のスタッフには自分で立てた販売目標はありますが、会社からノルマを与えて競わせることはしません。担当者が不在のときでも、お客様のために最善のサービスをすることが目的なわけですから。
——ただ、昇進昇格は年功序列ではなく、実力主義ですよね。競争原理が働けばそこに勝者と敗者が生まれるのではないですか。
【横田】たしかに、営業成績の優劣や昇進昇格を社員同士の競争ととらえると、組織には勝者もいれば、敗者もいるし、周りの人間の成功や出世を妬むものです。しかし、そういう心理が働くのは、実際の能力や周りの評価に比べて自分を高く評価しているからです。自分を客観的に、正確に見える鏡をその人の周りにたくさん置くようにすればいい。その鏡として、双方向の人事考課制度をつくったのです。一つが自己申告考課表、もう一つが社員の投票に基づいた優秀社員表彰制度で、「安全運転推進賞」「地域美化推進賞」など100前後の賞を用意しています。周りの社員がその人のいいところを見つけて、褒めてあげるわけです。こういうことが根付いてくると、自分の立ち位置を認識するし、周りの人に対するネガティブな感情が生まれにくくなります。そのいい例が、現在の社長に対する評価でしょう。彼は先輩社員を追い越して社長になっていますが、ナンバー2の2年先輩が、私にこう言っています。「私が彼を全面的にサポートしますから心配いりませんよ」と。彼が社長になることに、社内で誰も不満を抱いていないのです。