有報のセグメント情報から分かる資産の内訳
それでは、積水ハウスの234.1日という棚卸資産回転期間の異常性について検証してみよう。
棚卸資産回転期間の計算式で使う「棚卸資産」は、決算日時点における金額である。そのため、決算日直前に仕入れが重なることで瞬間的に在庫が膨らんで、結果的に棚卸資産回転期間が長く計算されている可能性もあるだろう。
そこで、過去4年間を遡って棚卸資産回転期間の推移を見てみたが、日数に大きな変動はなかった。積水ハウスはこの4年間、ずっと230日前後で推移している(ちなみに大和ハウス工業は100日前後で推移している)。
したがって、積水ハウスの棚卸資産回転期間の長さは、2018年度に限った特殊事情ではないといえる。
次に、積水ハウスは複数の事業を営んでいる会社なので、どの事業が要因で積水ハウスの棚卸資産回転期間が長くなっているのか(言い換えれば、どの事業で多額の棚卸資産を抱えているのか)を調べてみよう。これは、有価証券報告書の「セグメント情報」で確認できる。
積水ハウスは、「戸建住宅事業」「賃貸住宅事業」「リフォーム事業」「不動産フィー事業」「分譲住宅事業」「マンション事業」「都市再開発事業」「国際事業」の合計8つの事業セグメントで構成されている。
賃貸住宅事業:賃貸住宅、医療介護施設等の設計、施工及び請負
リフォーム事業:住宅の増改築等
不動産フィー事業:不動産の転賃借、管理、運営及び仲介等
分譲住宅事業:住宅、宅地の分譲、分譲宅地上に建築する住宅の設計、施工及び請負
マンション事業:マンションの分譲
都市再開発事業:オフィスビル、商業施設等の開発、保有不動産の管理、運営
国際事業:海外における戸建て住宅の請負、分譲住宅及び宅地の販売、マンション及び商業施設等の開発、分譲
原因を探るため、積水ハウスの資産全体をタテに切ってみよう。つまり、事業セグメント別に資産を分割するのである。すると、国際事業と都市再開発事業が積水ハウスの資産全体の大部分を抱えていることが判明する。都市開発事業で5393億円、国際事業で9437億円もあるので、割合としては、この2事業だけで積水ハウスの資産全体の約4分の3を抱えていることになる(図表3参照)。
もちろん、セグメント資産には棚卸資産以外の資産も含まれているため、セグメント資産が多いから棚卸資産が多いと結論づけるのは短絡的すぎる。