ビール狂でも本当のビールの味はわからない

ブランド名が伏せられた場合は、どちらのコーラでも口に入ったとき、感覚(味覚)と快楽(糖分)を感じる脳の前頭前野腹内側部(VMPFC)が活動しました。一方、ブランド名を明かした場合は、コカ・コーラだけ、脳の前頭前野背外側部(DLPFC)が反応したのですが、ペプシコーラでは反応しませんでした。DLPFCは、短期記憶や連想などの高度な認知機能をつかさどる部位です。これはペプシコーラにはないコカ・コーラへの特別な文化的感情やブランドイメージが、高次の脳機能を活性化させたと考えられます。

阿部誠『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(KADOKAWA)

この実験により、VMPFCは感覚を、DLPFCは感情を、と別々の要因に影響を与えて、対象への選好が形成されると彼らは結論付けました。大がかりな実験のため、サンプル数が67と少ないのと、コーラを摂取している環境が非日常的であるという問題はありますが、脳内メカニズムを視覚化したことは、大きな進歩でしょう。

私は大のビール好きで、飲みに行ったときは最初から最後までずっとビールです。アメリカに住んでいたときは、法律で禁止されていないので、自分でビールをつくったこともあります(サミエル・アダムスのような味だと友人からは好評でした)。国産4社の違う銘柄を置いている居酒屋などでは、いろいろなブランドを混ぜて注文して当てっこをします。合宿など、旅館でビールを飲むときには、必ず1本1本違うビール、発泡酒、新ジャンルを混ぜて買ってきて、みんなでブラインド・テイスティングをします。それでも相変わらず正解を外してしまうことに、最近は慣れてくるとともに、納得し始めています。やっぱり自分もラベルを飲んでいるんだなあと……。

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