勉強ができる子はネット依存のリスクを知っている

デジタル社会における人間能力の開発を扱った別のOECD報告書でも、ネット利用がメンタルヘルスを害しているかもしれないという問題が大きく取り上げられており、これまでふれてきたPISA調査の結果が参照されている。

本川裕『なぜ、男子は突然、草食化したのか 統計データが解き明かす日本の変化』(日本経済新聞出版社)

そこでは、さらにPISA調査のネット関連の別の設問の結果を引用して(図表4参照)、問題を克服するためにはネット依存の弊害に自覚的になることが重要だと指摘している。その部分を引用しよう。

「勉強のできる生徒は技術の極端利用(技術への依存)と結びついているリスクをよく知っており、コンピューターにどれだけの時間を費やすか、またいかにデジタル機器を使うかについてより自覚的である。PISA調査のデータは、高学力生徒はインターネットの接続が切れても気分を害すことが少ないのである。インターネットがつながらずに気分が悪くなる生徒は、数学、科学のテストで低学力の生徒が62%であるのに対して高学力生徒は45%と少なくなっている」(OECD Skills Outlook 2019, p.159)。

なお、引用の通りの一般傾向とは反対に、日本と韓国だけは高学力生徒のほうがネット不接続にイラつきやすくなっている。理由は不明である。

青少年へのネットの長時間使用の禁止をすべき

以上のように青少年を取り巻く状況は深刻化しているので、何らかのネット依存対策が必要である。ネット利用も依存症に陥りやすいという点ではアルコールやたばこと同じである。アルコールやたばこは未成年には禁じられているし、特別の税が課せられているのに、ネット利用は、なぜ、野放しになっているのであろうか。他国の対策も参照しながら以下のような対策を検討すべきではなかろうか。

・青少年へのネットの長時間使用の禁止
・広告規制(青少年をあおるような広告の禁止。弊害の併記義務化)
・スマホ税を原資とした疫学的研究の促進、および病気としての認知
・学校における啓発活動の普及

なお、対策を考えるにあたっては、図表1の分析でふれたように日本や韓国など儒教圏諸国では高校生のネット依存の程度が格段に低い点なども大いに参考にしながら、さらに教育現場や家庭内でネット依存を根絶できるような働きかけが必要である。

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