トランプ大統領はFRBに「利下げ」を行わせたい

先行き不透明感が高まる中、FRBのパウエル議長は、基本的には金融緩和を重視している。しかし、FRB関係者の見解が、一つにまとまっていない。これは、一時的にドル/円の為替レートを上下に変動させるだろう。

7月末のFOMC(連邦公開市場委員会)では、2名の地区連銀総裁が利下げに反対票を投じた。彼らは総じて米国経済は回復のモメンタムを維持し、利下げは必要ではないと考えている。また、金融緩和に関するFRB関係者の考えにも濃淡が感じられる。FOMC参加者の見解をどうまとめられるか、パウエル議長の力量が問われる。

一方、市場参加者は9月のFOMCでの利下げを既定路線と考えている。さらに年内に追加の利下げを予想する市場参加者も増えている。本当にそうなるか否かは、為替相場に大きく影響する。トランプ大統領が繰り返しFRBにさらなる利下げを求めていることも、市場参加者がFRBの追加的な利下げを期待する一因だろう。トランプ大統領はFRBに利下げを行わせて米国の株価を支え、有権者の支持を獲得しておきたい。

中国や欧州でも景気の下方リスクが高まっている

もし、FOMCなどの場でFRB関係者の見解の相違が解消されていないことが確認されるなら、8月上旬のように局所的にドル買い・円売りの取引が増えることが考えられる。反対に、FRBの政策方針が金融緩和にシフトすると考えられる場合、内外金利差の縮小から、従来以上に円高が進むこともあり得る。FRBの金融政策のスタンスがどうなるかは、ドル/円の為替レートに無視できない影響を与える。

また、米国以外の国や地域でも、景気の下方リスクが高まっている。中国経済は成長の限界を迎えている。度重なる景気刺激策にもかかわらず、十分な効果が表れていない。中国経済は一段と厳しい状況を迎える可能性がある。ユーロ圏経済はドイツを中心に景気後退懸念が高まっている。それを反映して、ドイツの国債流通市場では短期から30年まで全ての国債の流通利回りがマイナス圏に落ち込んだ。

やや長めの目線で考えると、円はドルなどの主要通貨に対して買われやすいだろう。ただ、米中の通商協議への思惑なども絡み短期的にはドルが反発する可能性も排除はできず、当面は不安定な展開となることも考えられる

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