日本全国に広がる万葉の歌
『万葉集』といえば大和国(現在の奈良県)を思い浮かべる人が多いかもしれないが、収録されている歌の舞台は近畿に限らず東国、東海、北陸、四国、九州と、日本列島に広く分布している。
皇族、貴族、農民と、さまざまな身分の人々が詠んだ歌が収められている『万葉集』。大和への思いをはせながら東北から九州まで赴任する役人(官人)も歌い手として多く含まれることが、その一因として挙げられる。
上野教授は「律令官人たちの旅は、地方の言語や風物への関心を呼び起こすとともに、大和を故郷とする文学を生み出した」と話す。上野教授による名訳・解説とともに、全国に広がる万葉の歌をたどってみたい。
奈良を知れば、万葉集がもっと楽しくなる
『万葉集』で歌われる地名のうち、大和(奈良県)の地名は約300と群を抜く。奈良の土地勘があれば『万葉集』がさらに楽しめること請け合いだ。