新元号「令和」の発表とともに脚光を浴びた『万葉集』には、ゆかりの地・奈良のほか、日本中の幅広い地域が歌われている。『万葉集』の新しい読み方を提案する奈良大学文学部・上野誠教授に、その楽しみ方を聞いた。

新元号はグローバルかつローカル

――『万葉集』の新しい読み方に定評のある奈良大学文学部・上野誠教授は、新元号の「令和」から「これからは地方の時代というメッセージが読み取れる」と言う。

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「令和」という元号の出典は、万葉集の巻五です。730年に九州・大宰府の国司の長官、大伴旅人おおとものたびとの邸宅で梅の花見の宴が催され、そこに集まった人々が詠んだ歌々には、「初春令月、氣淑風和」という文章を含む、漢文で書かれた序文があります。そこから“令”と“和”をとっているんですね。

序文の一部を書き下し文にすると「時に、初春しょしゅん令月れいげつにして、気く風やはらぐ。梅は鏡前きゃうぜんふんひらき、らん珮後ばいごかうかをらす」となるのですが、そもそもこの序文は、中国の王羲之が書いた『蘭亭序』という書道史上最も有名な書作品を踏まえて書かれているんです。