大学に提出する資料の「電子化」が進む
一方で、新しい大学入試制度においてカギとなりそうな存在も出てきた。それが「eポートフォリオ」だ。
「eポートフォリオ」とは、普段の高校生活における学習情報や部活動・海外活動の記録をデジタル化したものである。現在、これを入試の判断資料として活用しようとする動きが加速している。今は生徒がそれらの情報を自分で入力して記録する「eポートフォリオ」だが、AIの進展でさらに使い勝手がよくなると見込まれている。すでに大学教育の場で活用するケースも増えている。
入試での活用を前提に、研究が続けられていたeポートフォリオの一つ、「JEP(JAPAN e-Portfolio)」も先日完成した。リーダー役を担う関西学院大学をはじめとして、群馬大学、大阪教育大学、同志社大学などの11大学が入試で利用することを2018年9月の時点ですでに公言している。特に、文部科学省が進めようとしている調査書の電子化にJEPなどが活用されるようになれば、大学への提出資料として「eポートフォリオ」は急速に普及するであろう。
総合的・多面的入試と「eポートフォリオ」は相性がいい
また現在、国公私を問わず、インターネットを用いた出願が広がっている。インターネットだけに、「eポートフォリオ」とは当然ながら相性がよく、これが入試に取り入れられれば、文部科学省が志向する総合的・多面的入試の展開にとって効用が大きいうえ、入試に伴う業務の簡易化という効果も見込まれる。
そもそも55万人にもなる大学受験生の思考力・判断力・表現力を、試験で判定するのは大変だ。まして学力を支える要素とされる「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を短期間に測定することなど、どこまでできるだろうか。そうした意味で、主体性を伴う活動記録が記された「eポートフォリオ」が、今後合否判定の判断材料になる可能性は大いにあるし、もちろん面接での質疑の材料としては最適なのだろう。
こうして整理すると、2020年入試改革は、大学のあり方そのものにおいて、さまざまな意味でターニングポイントとなっていることが分かる。これまでに繰り返された入試改革に伴って起こった変化以上に、今回の改革を経て、大学地図がさらに変わることは間違いなさそうだ。