100年を超えても一線で活躍する“主力”
かつて筆者は「100年ブランド」を調べたことがある。定義した条件は「全国の小売店で買うことができ、生活に密着した商品」——。地方の旅館には何百年も続く老舗があるが、日常生活で利用する機会は少ない。また地方で歴史の長い銘酒・薬用酒とも区別してみた。
例えば、次の商品がそれに当たるのだ。
・「花王石鹸」(花王) 1890年
・「蚊取り線香」(金鳥。社名は大日本除虫菊) 1890年
・「森永ミルクキャラメル」(森永製菓) 1899年
・「亀の子束子」(亀の子束子西尾商店) 1907年
一時代を築き、今でもなじみがある商品だ。だが、各社の企業規模の拡大もあり、中には企業の屋台骨を支える商品とはいえないものもある。一方、三ツ矢ブランドは2018年の販売数量は約4000万箱、炭酸ブランドではコカ・コーラに次ぐ2位という主力商品だ。
三ツ矢ブランド全体の約7割を占める「三ツ矢サイダー」は、戦後の高度成長期以降も多少の浮き沈みはあったが、人気は継続した。なぜ継続できたのか。ブランド担当者に聞いた。
水を磨き上げ、原料は「社外秘」
「三ツ矢ブランドは、まず水にこだわります。ろ過を重ねた安心・安全な磨かれた水を使い、保存料や着色料も使用しません。中身は定番の三ツ矢サイダーに代表されるように透明。透明な液体は、着色料などでごまかせないのです。消費者調査をしても、品質や機能に対して高い評価をいただいています」
三ツ矢を含む「炭酸飲料」を担当する水上典彦氏(アサヒ飲料・マーケティング本部マーケティング一部・炭酸グループグループリーダー)はこう話し、同ブランドのこだわりをこう続ける。
「現在、訴求している価値は大きく分けて3つで、(1)日本生まれ、(2)安心・安全、(3)爽快感です。日本生まれは三ツ矢サイダー自体もそうですが、例えば2008年からスタートした『特産三ツ矢』(2016年まで『ぜいたく三ツ矢』)では、国内47都道府県のおいしい果物を取り入れています」
「特産三ツ矢」で、筆者と担当編集者がともに飲用経験があったのが、「特産三ツ矢 青森県産王林」だ。「アップルタイザー(Appletiser、りんご果汁100%のスパークリングジュース)のようでおいしかった」と男性編集者は話していた。
「安心・安全でいえば、水はろ過を重ねて不純物を徹底して取り除きます」(水上氏)と言い、「爽快感は、例えば、香りと炭酸のバランスを考えながら、甘さとガス圧の強さを調整します」と話す。フレーバーの原料は主に果実由来だが社外秘のようだ。