地理は、全科目の基礎教養になる

もっと詳しくお話しします。例えば、英語の長文で題材になることというのはさまざまなものがありますが、それらの多くは地理と結びついています。貿易の話や資源の話、バーチャルウォーターの話やフェアトレードの話……。これらは全て、地理を勉強していればある程度の前提知識を持って望むことができます。

西岡壱誠『現役東大生の世界一おもしろい教養講座 正しく未来を見通すための「地理的思考」入門』(実務教育出版)

また、国語でも同じように、世界経済についての文章や高齢化についての長文が出ることがあります。その時、あらかじめその前提を知っている学生とそうでない学生とでは大きな差が出るのです。また、世界史でヴァイキングの話が出た時、その地域の冬の厳しさや土地の肥沃さ・農業の大変さを知らなければより深く理解できません。

もし、ストレートに地理が題材になっていなかったとしても、人口や気候・資源や貿易の話というのはどこかで関わってきます。高齢者介護の問題を人口の高齢化と結びつけずに語ることはできませんし、日本とヨーロッパの価値観の違いを、日本とヨーロッパの気候や地形の違いを抜きにして考えることはできません。

「地理」という言葉の由来を知っていますか? 地理は、「地上の理(ことわり)」のことを指します。地球上の出来事・人間の営みすべてのことを総括して「地理」というのです。つまりは、すべての学問の「入り」になるような構成要素を網羅的に学べる科目なのです。気候や土地・農業に工業・人口に都市経済……これらはすべて、学問の基礎になる「常識」となるのです。「一般教養」と言い換えてもいいかもしれませんね。

地理は、思考力にも直結する

そして、「常識」や「一般教養」があれば、いろんな物事を考えることができるようになります。

2020年入試改革では「思考力」が前面に押されていて、AIが台頭する時代において人間がAIに勝てるのは知識の量ではなく思考能力だと言われて久しいですね。しかし、「思考力」なんて言われても、何をどう思考すればいいのかわかりませんよね。「何を考えればいいの?」って感じだと思います。事実、僕も以前はそうでした。