病名や定義の変化に注意が必要
総人口に占める割合を示すデータはさまざまですが、成人においては、ASDは多くて人口の1%、ADHDは5%前後と言われています。発達障害といえば、ASDに含まれる「アスペルガー症候群」をイメージする人が多いかもしれませんが、実際にはASDよりもADHDのほうが、かなり多くの当事者が存在しています。
前述したように、「発達障害」を個別の疾患と捉える誤解は、医療関係者にも少なくありません。これには、やむをえない事情があります。
その原因のひとつとして、ある疾患の呼び名が複数あったり、その呼び名が時代によって変化したりと、診断名自体も時代とともに変化していることがあげられます。
DSM-5(※)は「神経発達障害」という大カテゴリーを設けており、ASD、ADHDのほか、LD、知的能力障害(精神遅滞)、コミュニケーション障害などが含まれています。
※DSMはアメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル」。精神科の診断基準として世界的に用いられており、2013年に第5版が発表された。
しかし、この診断基準における名称も、時期により変化しています。以前に用いられていた「アスペルガー症候群」という病名も、DSM-5になってから使われなくなりました。現在のところ、アスペルガー症候群はASDに含まれています。今後も、疾患の定義や名称が変わる可能性は十分にありますので、注意が必要です。