朝日の総理番は、一体、何をやっていたのか

「取材経緯」は後半でこう説明する。

「8日、『ハンセン病関連で首相が9日に対応策を表明する』という情報とともに、控訴はするものの、経済支援を検討しているとの情報を得ました。さらに8日夕、首相の意向を知りうる政権幹部に取材した結果、政府が控訴する方針は変わらないと判断しました。このため朝日新聞は1面トップに『ハンセン病家族訴訟、控訴へ』との記事を掲載することを決めました」

ここでも「首相の意向を知りうる政権幹部」に対する取材によって「政府が控訴する」と朝日は判断している。繰り返すが、最後に判断するのは官邸幹部ではなく、安倍首相だ。朝日は安倍首相本人にきちんと取材したのだろうか。

新聞社やテレビ局の政治部には、「総理番」と呼ばれる記者が数人いる。総理番は、総理大臣官邸の敷地内にある記者クラブ「内閣記者会」に籍を置き、首相の動向を細かく追っている。安倍首相が海外にでかけるときは、政府専用機に乗って付いていく。首相に密着してきた朝日の総理番は、一体、何をやっていたのか。

「取材経緯」の記事は、政治部長の署名記事である。ここからハンセン病訴訟の行方については、政治部が中心になって追いかけていたことがわかる。

安倍首相が間違った情報を与えて朝日をはめた?

いまマスコミでは「安倍首相が朝日をはめた」という噂が流れている。朝日は社説を中心に"反安倍"を主張している。7月3日の党首討論会などでの朝日の論説委員や編集委員とのやり取りを見ていても、安倍首相を攻撃する姿勢がにじみ出ているのがよくわかるし、それに対して安倍首相は激しく応戦している。

そんな両者の関係から、安倍首相やその関係者が朝日の記者に間違った情報を与え、恥をかかせたというのが、噂の見立てだ。しかし沙鴎一歩はこの噂は事実無根だと思う。

取材を受ける側、特に閣僚や高級官僚など重責を担う人間は、新聞やテレビの記者に対し、ミスリードさせないことに心血を注いでいる。誤った情報を報道されて一番困るのが、彼らだからである。だから答えられないことは「答えられない」と話すし、ましてやウソをつくことはない。どこかで「ウソをついた」と書かれれば大変なことになるからだ。安倍首相もいくら朝日が嫌いだからと言ってウソはつかないだろう。

こうしたことから、誤報の原因はこう結論付けられる。朝日は安倍首相に直接取材ができないまま、一面トップの記事を書いた。だから結果として誤報になったのだ。