「アクセラレーター」による支援とはどんなものか

急成長を目指すスタートアップが増え、支援も増えた副産物として、成功するスタートアップを生み出すために必要な仕組み、そして考え方が徐々に体系化され始めています。

その一つのきっかけは、アメリカのシリコンバレーを中心に、2000年代中盤からスタートアップを支援する「アクセラレーター」と呼ばれる組織が生まれたことにあります。

スタートアップはアクセラレーターに少額の投資をしてもらい、3カ月から6カ月といった短期間、アクセラレーターの提供するプログラムに参加します。その間、スタートアップはアクセラレーターから、自社の事業を加速する(アクセラレート)ための教育や支援、アドバイスなどを受けることができます。

アクセラレーターの成功を受け、大企業も「コーポレートアクセラレーター」という機能や組織を設けるようになりました。コーポレートアクセラレーターを介し、大企業は自社の資源をスタートアップに提供し、その成長を支援しながら、いち早くスタートアップとの深い関係性を持とうとします。私のいたマイクロソフトもMicrosoft VenturesやMicrosoft Acceleratorという組織を持ち、スタートアップを支援していました。

ハーバードMBAより最強のアクセラレーター

数あるアクセラレーターの中でもトップの評判と実績を持つのが、2005年に設立されたY Combinatorです。設立以来、彼らはすでに1000社以上のスタートアップを支援し、多数の有名なスタートアップを輩出しています。たとえば有名なところではAirbnbやDropboxなどがY Combinator出身のスタートアップです。

Y Combinatorは、数万にのぼるスタートアップからの応募と、数千にも及ぶ支援先のスタートアップの生死を傍で見てきました。おそらく彼らはスタートアップの成功法や失敗のパターンに世界で最も詳しい組織と言えるでしょう。

ベンチャーキャピタルなどに比べて、彼らは最も初期のスタートアップを支援することが多いため、スタートアップのトレンドやスタートアップの初期において重要な「反直観的」な事実について、深く理解しています。

そしてY Combinatorはスタートアップ支援のノウハウを、大学の講義やセミナー、ブログへの投稿などを通じて惜しみなく公開しています。

Y Combinatorは年に2回プログラムを実施しており、スタートアップの募集を受け付けています。ここ数年は1回の募集に、世界中から1万弱の応募があるようで、その合格率は世界最高峰のビジネススクールであるハーバードビジネススクールよりも低いとも言われています。