MBAを取るより「起業」のほうがキャリアになる

なぜアクセラレーターがこれほど人気を集めるのでしょうか。一つの理由としては、アクセラレーターが、今やある種のビジネススクールとしての機能を果たしつつあるからではないか、という説があります。つまりお金を払ってMBAを取得して「プロの管理職」になるより、起業して「新しい事業を興す経験」をしたほうが役立つキャリアになる、と考える人が増えているようです。

その背景として、新しい事業を生み出すことの市場価値が高まっている点が挙げられるでしょう。

2013年にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士が発表した論文、『雇用の未来―コンピューター化によって仕事は失われるのか』(The Future of Employment)をきっかけに、いわゆる「テクノロジ失業」が取り沙汰されるようになりました。

近年の人工知能やロボティクスの発達や期待もその一因かもしれませんが、ブルームバーグのレポートによれば、銀行という業種一つ取っても、テクノロジによる業務効率化で、2008年と対比して60万の職が削減されたと言われています。

「起業」という仕事が人工知能に奪われない理由

かつて機械の発達が人や動物の肉体的定型労働を減らしたように、今度は人工知能やロボティクスの発達が、認知的定型労働を減らしていくことは間違いありません。その結果、中程度の技能が必要とされる職が失われていく、という指摘はあらゆる論文で共通しています。

こうしたテクノロジ失業についていち早く指摘したMITのエリック・ブリニョルフソン教授らが記した『機械との競争』(村井章子訳、日経BP社)では、失業対策として「起業」を勧めています。それもそのはずで、起業やスタートアップのような、創造性を求められる領域への挑戦こそ、人工知能などに向いていないと目されているからです。

それは言い換えれば、新しい価値を生むような仕事でない限り、これからは生き残っていけないということなのではないでしょうか。つまりそれは、広義の創造力を持たない人や新しい価値を作り出すことのできない人にとっては、とても厳しい世の中になるかもしれない、ということでもあります。