「今読むべき本がわかる」リアル書店

書籍のオンライン販売からスタートしたAmazonが、まさかのリアル書店「Amazon Books(アマゾン・ブックス)」をシアトルにオープンしたのは2015年11月。19年5月31日現在、17店舗を展開する書店チェーンとなりました。

特徴的なのは、本がほとんど平積み・面陳列、つまり表紙が見えるようにディスプレーしてあること。まるでショールームのような店内は大変居心地が良く、快適です。欲しい本を決め打ちで買いに行くというよりは、何か話題の本は何か、売れている本はどれかと、気軽に立ち寄る感覚です。カフェも併設されているので、買った本をゆっくり読むことができます。

店頭で気に入った本のバーコードをスマホでスキャンして、Amazon.comで購入することも可能で、その場合、店舗は文字通りショールーム。本によっては、プライム会員割引が適用されるのもうれしいかぎりです。

(左)シアトルにあるAmazon Booksの University Village店。(右)Amazon Booksの店内。

おススメコーナーが持つ、圧倒的な説得力

棚展開には、Amazon.comで収集したユーザーの膨大な購入データがフルに生かされています。「レビューの平均点数が高い本」「1万レビュー以上ついた本」「ほしい物リストで人気の本」「ニューヨークで(=住所登録がニューヨークのユーザーに)よく売れているノンフィクション本」など、どれのおススメコーナーにも説得力があります。

店員の主観的な推しを徹底的に排除し、「売り上げ」「人気」に絞った商品展開が特徴の店として、日本の「ranKing ranQueen(ランキンランキン)」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。ただranKing ranQueenは、渋谷駅コンコースや新宿駅東口地下にも一時期出店していて盛況でしたが、2010年代以降は閉店が目立ち、元気がなくなっています。

ranKing ranQueenの不調には、いくつかの理由がありますが、その1つに、「何の売り上げランキングなのかがユーザーに伝わっていない」という点があったと思われます。2010年代のSNSの普及によって、特定商品の人気がユーザー自身の「シェア」数や「いいね!」数で可視化されると、企業や特定団体が発表する「大本営発表」的なランキングの信頼性や説得力が揺らいでしまいました。

その点、Amazon.comの膨大な個人データを集計した「平均点数」「レビュー数」「ほしい物リストの上位」「ニューヨークで売れている」には、有無を言わさぬ公平性と説得力があります。Amazon Booksは良いものしか置いていない、良質なセレクトショップである――。利用者の目にはそんなふうに映っているのではないでしょうか。

(左)「ほしい物リスト」で人気の本。(右)ニューヨーク在住ユーザーに人気のノンフィクション。