ホールフーズの商品を買える

私が訪れたサンフランシスコの575Market店は、一般的なコンビニほどの大きさ。品ぞろえも食品や飲料など、これまたコンビニ的です。ただし、Amazon Goには、米国の普通のコンビニと比べた大きな優位性がありました。Amazonが2017年に買収した米スーパー大手の「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」(以下、ホールフーズ)の商品が買えるのです。

(左)Amazon Goの店内の様子。(右)ホールフーズの「エブリデイ・バリュー」商品。

ホールフーズは、自然派志向の食品やオーガニック製品を取り扱っているのが特徴で、“意識の高い”層に人気があります。オフィス街のど真ん中で、ホールフーズの品物が買える点は大きな売りとなっています。ドリンク、ジャム、生鮮品の棚では、ホールフーズのプライベートブランド「365エブリデイ・バリュー」を多数見かけました。「365」はAmazon Goのなかでも、新しい店舗であればあるほど品ぞろえが多いようです。

オフィスワーカーに、ウケるに決まっている

Amazon Goを利用した感想は、一言「満足」です。レジに並ぶストレスや財布を出す手間がゼロになるのは、ものすごく快適。「毎日ちょっとした買い物をする」コンビニタイプの業態だからこそ、その快適感をもっとも享受できると感じました。

1分でも時間が惜しい多忙なビジネスパーソンにとって、買い物時間の短縮は大きなメリット。同店が掲げる「Good Food Fast」のモットー通り、客は調理済みの商品を会計なしにすぐイートインスペースで食べられるので、ランチにかける時間そのものも短縮できます。Amazon Goは「時短」と「おいしい食事」を提供することで、オフィス街で働く人たちの満足度を確実に高めているのです。

1つ課題があるとすれば、欠品アイテムの多さです。リアルタイムに購買データを取得できているので自動発注も可能なはずですが、各棚の欠品が目立ったのは事実。現在のAmazon Goは商品補充を人力で行う必要があるため、いわゆる無人店舗ではありませんが、もし何らかの方法で商品補充まで自動化されれば、人はほとんどいらなくなるでしょう。

575 Market street店のイートインスペース。同店にはミールキットの特設棚もあり、販売を強化していた。

面積当たりの売り上げは、普通のコンビニの1.5倍

現実問題として、このような完全ウォークスルー決済店舗を出店するには、莫大な設備投資が必要です。ただ、店舗運営コストは下げられます。レジスペースがない分、店舗面積を小さくできる。もしくは、レジスペース分だけ売り場を増やせるので、売り場効率が上がるばかりか、レジ人員が必要ないため人件費も削減できます。

関係者へのヒアリングによれば、アメリカの通常のコンビニでは1平方フィート当たりの売り上げは平均約570ドル(約6万2000円)。Amazon Goは、約850ドル(約9万1000円)に上るといいます。単位面積当たりの売り上げは、通常のコンビニの1.5倍というわけです。

Amazon Goは2021年までに3000店舗の出店を計画していると言われています。そこまで増えれば、「365」ブランドをはじめホールフーズで販売している商品の販売量も大幅に増加し、製品単位当たりの固定費負担額も下がる。つまり、販売利益率の向上が飛躍的な見込めます。無論、ホールフーズの物流はAmazon Goにもそのまま使えるので、他のコンビニ店との競争で、さらに優位に立てる点も忘れてはなりません。