“つまみ食い”には「岩波ジュニア新書」
科学者のタイプは大きく2つに分けられます。一つは数値を使って厳密に分析してゆく「虫の目」を持つタイプ。もう一つは物事や分野を広く見渡して、性質の違いや関連に着目する「鳥の目」を持つタイプです。
『数量化革命』は中世からルネサンスにかけて「虫の目」の視点である数量化がいかに科学を発達させたかに触れた本です。数量化は科学にとって不可欠ですが、すべてが数量化されると、新しい発展はなくなります。
現在の企業社会では効率化の徹底が追求された結果、世界中で数量化や一様化が進んでいます。これは危険な兆候です。生物学が教えるように、多様性を抱え込んでおかなければ、環境の激変には対応できません。
『ビッグバン宇宙論』を読むと、現在では定説になっている「ビッグバン理論」も当初は様々な反論があり、回り道を経ながら地位を固めていったことがわかります。宇宙物理学というと縁遠いと思われがちですが、理論の成立には泥臭い人間同士のやりとりが欠かせません。
物理学者の湯川秀樹は「自然は曲線を創り、人間は直線を創る」という言葉を残しています。直線は2点を結ぶ最短距離で、最も単純です。しかし自然界に直線はありません。科学とはいわば複雑な自然の一部だけ取り出して、曲線を近似的に直線で表したものなのです。決して完全無欠のものではありません。
最後に、どうしても最先端の「つまみ食い」をしたいという人には「岩波ジュニア新書」を勧めます。中高生向きのシリーズですが、入門書としての内容は十分。私も、ときおり読むんですよ。