効率化、数量化だけでは環境の激変に対応できなくなる

(1)『寺田寅彦随筆集』 寺田寅彦・著 岩波文庫
…同じ漱石門下の小宮豊隆が編纂。真摯な科学精神と温かい人間味が両立する珠玉の全5巻。書店にまつわる随想「丸善と三越」は必読。
(2)『銃・病原菌・鉄』 ジャレド・ダイアモンド・著 草思社
…旧大陸の人間が新大陸を制覇できたのは地理的要因に恵まれていたにすぎない。人類史を科学の眼で再定義。ピュリッツアー賞受賞作。
(3)『文明崩壊』 ジャレド・ダイアモンド・著 草思社
…前著では「文明発展」を追った著者が「文明崩壊」の道筋を調査。自らの環境を破壊する文明の過剰さ。人類の持続可能性を問う。
(4)『ビッグバン宇宙論』 サイモン・シン・著 新潮社
…「宇宙誕生」の謎に天才たちはどう挑んできたのか。創世神話からアインシュタインまで。人類最大の謎に迫る傑作ノンフィクション。
(5)『百億の星と千億の生命』 カール・セーガン・著 新潮文庫
…地球がいまどんな状況に置かれているのか。天文学者の著者は「鳥の目」で真実を解説していく。死の床でも書き続けた人類への遺言。
(6)『科学の終焉(おわり)』 ジョン・ホーガン・著 徳間文庫
…科学にはもう発見すべき偉大なテーマは残っていない。グールド、クーン、チョムスキーなど偉大な知性たちの本音を巧みに暴き出す。
(7)『ヤモリの指』 ピーター・フォーブズ・著 早川書房
…吸盤なしに張りつくヤモリの指。人工では作れない蜘蛛の糸。ナノテクノロジーなど、生物にヒントを得た工学技術の最先端を紹介。
(8)『アインシュタインの恋』 デニス・オーヴァーバイ・著 青土社
…音楽のように物理学を愛した20世紀最大の科学者は、聖と俗をあわせもつ奔放な人間だった。大量の未公開書簡から実像を描き出す。
(9)『数量化革命』 アルフレッド・W・クロスビー・著 紀伊國屋書店
…暦法や複式簿記から遠近法、楽譜まで。中世からルネサンス期にかけての発展を「数量化」というテーマで紐解く西欧精神史。
(10)『戦争の科学』 アーネスト・ヴォルクマン・著 主婦の友社
…戦争こそが、科学・技術の進歩の生みの親。殺人兵器の探求が生活向上を実現したという皮肉。4000年の科学史を兵器の視点から。
(11)『地震と社会』 外岡秀俊・著 みすず書房
…新聞記者として取材した阪神大震災を軸に、地震学の成り立ちなど歴史資料を縦横に渉猟。科学的な手法から「震災とは何か」に迫る。
(12)『ヘラクレイトスの火』 エルヴィン・シャルガフ・著 岩波書店
…分子生物学の誕生と生化学の確立に深くかかわった科学者による自叙伝。「賞レース」に堕ちた現代科学の現状を鋭く批判する。
(13)『人間の測りまちがい』 スティーヴン・J・グールド・著 河出文庫
…科学は政治と無縁ではない。なぜ差別的な政策に理論的背景を提供してきたのか。「科学的事実」が容易にねじ曲げられる怖さを描く。
(14)『原子爆弾の誕生』 リチャード・ローズ・著 紀伊國屋書店
…ドイツに対抗するための「マンハッタン計画」は、原爆開発の事実がないとわかってからも止まらなかった。科学者の業を知るために。
(15)『磁力と重力の発見』 山本義隆・著 みすず書房
…磁力や重力の「遠隔力」は1000年以上の空白を経て、近代物理学の扉を開いた。なぜ顧みられてこなかったのか。類書のない大著。

(久保田正志=構成 鷹尾 茂=撮影)