<strong>池内 了</strong>●総合研究大学院大学教授。1944年、兵庫県生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。国立天文台、名古屋大学などを経て2006年より現職。専門は宇宙物理学。近著に『ノーベル賞で語る現代物理学』。
池内 了●総合研究大学院大学教授。1944年、兵庫県生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。国立天文台、名古屋大学などを経て2006年より現職。専門は宇宙物理学。近著に『ノーベル賞で語る現代物理学』。

最先端のエッセンスだけをつまみ食いしたい――。気持ちはわかりますが、役立つことだけ身につけようという「ハウツー」は、「科学する心」とは正反対です。

科学する心とはなにか。『寺田寅彦随筆集』が参考になります。寺田は明治から昭和初期の物理学者ですが、その発想は少しも古びていません。どんな事柄も科学に結びつけて考える。何でも科学的に分析してしまうのは科学者の「業(ごう)」ですが、寺田は飛び抜けた連想力の持ち主でした。「金平糖(こんぺいとう)の角(つの)の研究」など連想を発展させて、思いがけない関係を見出しています。