これまでにみつかった人類最古のがんは「骨にできるがん」
がんの診断にはさまざまな道筋があり得るが、おおまかにいえば、医師の問診や健康診断でがんが疑われると、詳細な血液検査や画像検査へと進み、腫瘍に特徴的な物質が血中で増えていないか、あるいは、体内に腫瘍ができないかを調べる。そして最終的には、腫瘍の組織をとってきて、顕微鏡で病理医がチェックして判定する。
病院にはさまざまな病気の患者が訪れるが、いまやがん患者への対応が大きな柱となっている。がんは、2017年の日本における死因の3割を占めてトップなのだ。部位別では、男性は1位が肺、2位は胃、3位は大腸、女性は1位が大腸、2位に肺、3位が膵臓である。
国立がん研究センター研究所編の『「がん」はなぜできるのか』(講談社)によると、これまでにみつかっている人類最古のがんは、160万~180万年前の人類の化石で確認された「骨肉腫」だという。
骨肉腫は、骨にできるがんである。南アフリカの洞窟で発掘された化石をCT撮影したところ骨肉腫に特徴的な病変があったのだ。私たちの属するホモ・サピエンスとは異なる種の人類ではあるが、太古の昔から人類ががんとともに歩んできたことを示唆している発見である。
がんが日本人の死因1位になったのは1981年から
しかし、がんが主要な死因となるのは、20世紀も後半になってからだ。
人類にとって最大の脅威は、長い間、感染症だった。ペストやチフス、天然痘など、歴史に名を刻んでいる感染症はあまたある。たとえば戦後間もないころでは、多くの人は結核で亡くなっている。
がんが日本人の死因第1位となったのは1981年からで、それ以降はずっと1位を保っている。背景には、日本の高齢化があるとみられる。がんは高齢者がかかりやすい病気だからだ。
なぜ、がんは高齢者に多いのだろうか。高齢者は病気が多くて当たり前、という風にすませてもいいのだが、ちょっと掘り下げてみたい。
私が取材をしている京都大には、がんを専門とする科学者が何人もいて、世界の最先端に触れることができる。記者としてそんな環境をつかわない手はない。
最前線で研究している一人である医学研究科教授の小川誠司に、がんができるメカニズムの最新の知見を解説してもらった。