明治天皇陵(撮影=鵜飼秀徳)

現在は奄美でも火葬が主流となっているワケ

ところが奄美では、この20年ほどで、民間の葬儀社が島に進出。奄美でも“本土並み“の一般的な葬式が定着した。かつての土葬は、ムラ社会の中で相互扶助的な意味合いが濃い葬式だった。島や地方都市における土着的な葬送は肉体・精神的には大変な作業になるが、一方で、地域コミュニティを強固にしていた側面は大いにある。南西諸島における風葬・洗骨の改葬も、古来の殯の影響を多分に受けていると考えられる。つまり、穢れた死体を洗骨することで、不浄から浄へとステージを上げる、ということになる。

しかし火葬の普及と同時に、葬儀社が葬式全般を取り仕切るようになる。すると、相対的にムラ社会における葬送の役割は薄れていく。

奄美では近年、「家族葬」も出現している。東京などの大都市で進行する「個の葬送」「より簡素な葬送」が、奄美にも入り込み、古来の「重厚な葬送儀礼」を大きく変えようとしているのだ。

葬送文化の喪失は、ムラのつながりを弱体化させる要因にもなる。先ほど、奄美は人口減少傾向にあると述べたが、「個の葬送」が人口減少の間接的な一因になっているとの見方もできる。葬送文化はひとたび失われると、元に戻ることはない。人口減少が続く奄美で、「奄美らしさ」が失われることに、少なからず危惧を覚えるものである。

(写真=iStock.com)
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