モビリティ以外の産業にも影響大

MaaSへの適応を迫られているのは、自動車をはじめとしたモビリティ業界だけではない。不動産業界も影響を強く受ける業界の1つだ。都心から同じ距離にある町でも、MaaSが整備されて移動しやすい町と、そうではない町では、不動産の価値は大きく変わってくる。それを踏まえて、企画段階からMaaSと併せて開発するケースが増えていくはずだ。ほかにも、損害保険会社がカーシェアなどに対応して一時利用の損害保険を売り出す、金融会社がプラットフォームに即した決済サービスを提供するなど、新しい動きが次々と出てくるに違いない。モビリティ産業以外のビジネスパーソンも、これからはMaaSが普及した後の世界を念頭に置いて、商品やサービスを考えていくべきだろう。

MaaSの普及は、遠い未来の話ではない。おそらく日本で実装されるのは地方からになるのではないか。MaaSの展開に適しているのは、人口50万~100万人で、交通事業者が1~3社ほどの都市だ。日本全国において鉄道事業者は200以上、タクシー事業者にいたっては1万以上ある。東京だけでも交通業者が多く、統一したプラットフォームをつくるのは難しい。エリアごとにサービスが立ち上がっていく可能性が高いものと思われる。

有力なプレーヤーは鉄道会社だ。多くの鉄道会社は、グループとしてバス会社を持ち、沿線の不動産を扱っており、統合的なプラットフォームをつくれる条件はそろっている。

一方、海外勢の日本進出も間近に迫っている。MaaSグローバルの「Whim」はすでにイギリスやベルギーに進出しており、19年10月には日本でも展開予定という報道もある。

インターネットの世界のように、海外企業にプラットフォームを握られるのか。それとも日本勢が地の利を生かしてリードしていくのか。この競争にも、注目していきたい。

日高洋祐(ひだか・ようすけ)
MaaS Tech Japan代表取締役
2005年、鉄道会社に入社。ICTを活用したスマートフォンアプリの開発や公共交通連携プロジェクト、モビリティ戦略策定などの業務に従事。18年、MaaS Tech Japanを立ち上げ、MaaSプラットフォーム事業などを行う。共著に『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』(日経BP社)。
(構成=村上 敬)
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