「本当は何をしたいのか」を忘れていないか

佐宗邦威著『直感と論理をつなぐ思考法』(ダイヤモンド社)

ベスト10には入らなかったものの、フライヤー読者からの反響が大きかったのが『直感と論理をつなぐ思考法』です。公開してから日が浅いにもかかわらず、第14位にランクインしました。

本書が注目を集めた理由は、現代人の脳が「他人モード」になっていると指摘したことが大きいように思います。「お客様は神様です」という言葉が象徴するように、私たちはいつしか「自分がどう感じるか」ではなく、「どうすれば他人が満足するか」ということばかり気にするようになってしまいました。これはとりわけビジネスにおいてよく見られる現象です。顧客満足度はたしかに重要ではありますが、それだけを追い求めていると、ともすれば「本当は何をしたいのか」を忘れてしまいかねません。

本書を執筆した株式会社BIOTOPE代表・佐宗邦威氏は、「自分モード」の大切さをあらためて強調します。それは「本当に価値あるものは、妄想からしか生まれない」という言葉にも端的にあらわれています。妄想(=ビジョン)で動いている人ほど「同じビジョンを持つ人と一緒に何かを成し遂げたい」と考えており、逆にマーケットという「他人」を意識している人ほど「差別化を図って競争を出し抜きたい」と考えていると佐宗氏はいいます。だとすれば、どちらがより幸福を感じられるのか。その答えは明らかでしょう。

妄想を実現するための「ビジョン思考」

とはいえ妄想だけでは社会で通用しないのも事実です。そこで佐宗氏が提示するのが、「ビジョン思考」(Vision Thinking)。これは妄想を実現するためのフレームワークであり、自分モードから生まれる「妄想」、イメージ脳を駆使する「知覚」、壊してつくり直す「組替」、プロトタイピングによる「表現」をまわしていく創造サイクルを指します。これを使いこなせるようになれば、ビジネスから日常生活まで、あらゆる景色が変わってくるのではないでしょうか。

その他にも2月の公開ながら、『メモの魔力』や『FACTFULNESS』といったベストセラーの要約は依然としてよく読まれていました(それぞれ第13位、第19位)。今後も動向をウォッチしていきたいところです。

前田裕二著『メモの魔力』幻冬舎
ハンス・ロスリング/オーラ・ロスリング/アンナ・ロスリング・ロンランド著、上杉周作/関美和訳『FACTFULNESS』(日経BP社)
flier(フライヤー)編集部
本の要約サイトflier(フライヤー)は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだだけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。
(写真=iStock.com)
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