クリエイティブ・コンフィデンスを持つためのマインドセット
さて、先ほどからテーマにしている「主観を信じること」に加えて、ぼくたちデザイン思考家が掲げているのが、次の4つの「クリエイティブ・コンフィデンスを持つためのマインドセット」です。
一般的に、人は方向性や仮説がないモヤモヤした状況を嫌うもの。そんなとき、「自分ならいつかいいアイデアが出るさ」と楽観的に構えることはとても大切です。切羽詰まって机に向かって頭を抱えたり、眉間にシワを寄せたりしない。コーヒーを飲んで雑談しつつ、「どこにヒントがあるかな」とワクワクしながら探していくからこそ、いいアイデアが浮かびます。
ですから、クリエイティブ・コンフィデンスがある人って、「なんだか楽観的」なんですね。
はじめて訪れる国では、信号機、看板、店員のふるまいなど、目に入るすべてが「どうしてこうなんだろう?」「おもしろい!」ですよね。旅行者にとって、旅は気づきの宝庫。この旅行者と同じマインドを普段の生活にも持ち込んでみることが、2つ目のマインドセットです。「こういうもの」という思い込みをそぎ落とし、ヨソモノの目を持ってみる。そうすれば、見慣れている風景にも新鮮な発見があるはずです。
この「旅行者の目」を向ける対象は、日常だけではありません。入社したときに不思議に思った会社や業界の慣習、上京したてのときに衝撃を受けた都会のルール。これらに対して、だんだんなにも感じなくなっていった、という経験はありませんか? すっかり「当たり前」になってしまったことに対してもう一度初心者の目を取り戻すことで、キラリと光るアイデアの原石を見つけられるんです。
ぼくも(失礼ですがきっと)みなさんも、オールマイティな天才ではありません。得意と不得意があり、好きと嫌いがある、個性的な人間です。そんな凸凹な人間を組み合わせ、チームを組んでアイデアを出すことで、個人でいるよりずっとクリエイティブになれるのです。ですから、困ったときに声を上げたらすぐに助けてもらえたり、声をかけられたら「お安いご用!」と手を貸したりする環境をつくることが大切です。
いままでと同じものをつくる。みんなと同じことをする。競合を意識する。差別化する。……これらはクリエイティブの反対の姿勢で、誰かが描いた地図を見ながら船を進めるようなものです。危険も少なく、ラク。でも、誰かが見つけ、すでに征服している大陸にしか行き着くことができません。
一方で、いままでと違うもの、みんなと違うアイデアを目指すのは、真っ白な地図を片手に、羅針盤さえもないまま北極星と太陽だけを頼りに船を進めるようなもの。ものすごく大変だし、相当な勇気が必要です。でも、誰も見つけていない海や、まっさらな大陸に辿り着く可能性があります。みなさんには、こちらの航海に挑んでほしいのです。
クリエイティブでありたいと思うのであれば、クリエイティブな行動を信じ、まずは動いてみましょう。机の上で地図を眺めていても、新大陸は見つからないのですから。