【田原】でも、加藤さんたちはできた。
【加藤】最年少でアップルのシニアエンジニアになったり、国際情報オリンピックで世界大会に出たようなトップ人材がいたことが大きいですね。トップエンジニアは普通、グーグルやアマゾンに行って製造業の世界に来ない。彼らをいかにこちらの世界に連れてこられるかが勝負でした。
【田原】スーパーエンジニアの小橋さんとはいつ知り合ったのですか?
【加藤】5年前で、私が大学4年生のときです。シリコンバレーで知人を通してアップルでエンジニアをしていた小橋に会いました。彼も自分で事業をやりたいといっていて、その後も連絡を取りつつ、まず板金からやってみようかと。
【田原】キャディの起業はいつですか。
【加藤】2017年11月です。その2年前から技術的に可能かどうか小橋と検討を始め、開発に1年かけて起業に至りました。
【田原】スタートは順調でしたか?
【加藤】じつは初受注は起業の1カ月前でした。某大手メーカーの案件を紹介してもらったのですが、起業前だから、まだ板金屋さんとのネットワークもできていない。納期がすでに決まっている案件で、受注してから慌てて東大阪に飛んで板金屋さんを探すというスタートでした。
【田原】東大阪? 東京じゃなく?
【加藤】その大手メーカーさんの拠点が兵庫県。何かトラブルがあったときには近いほうが対処しやすいと考えて大阪に向かいました。じつは実際にトラブルは起きたんです。いろいろ回って3社の町工場にお願いしたのですが、3分の3で品質不良が発生。最終的には自分でホームセンターで工具を買ってきて、穴のサイズを広げて納品しました。最初にそういう経験をしたので、品質の管理にはすごく気をつかっています。
【田原】品質を良くするって、腕のない町工場と組まないということ?
【加藤】いや、加工の技術の問題で品質不良になることは1割もありません。大多数は認識の問題です。たとえば白という色でも、重工メーカーと家電メーカーでは、求められるトーンやムラの程度が違います。普段、重工メーカーから受注している町工場がいつもと同じように白く塗った部品を家電メーカーに納めると、バツになることもある。逆もまた然りです。そうした基準のズレが数えきれないくらいあるので、いま「このお客様の基準はこうだ」という情報を追加しています。これが溜まってくると、初めて受注する町工場でも齟齬なく作れるようになります。
下町工場をクールにしたい
【田原】なるほど。最初の受注以降はどうですか?
【加藤】本格的に事業展開を始めたのは18年の5月。そこからは毎月300~400社のペースで新規のお客様が増えています。19年2月の時点で累計のお客様は3000社を超えました。売り上げは月に30%で伸びていて、四半期で倍になってます。
【田原】すごいペースだ。町工場のほうは何社と組んでいるの?